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「ポリコレ」とはポリティカルコレクトネス(political correctness)の略称です。社会制度やあらゆる表現を差別・偏見のないものに変え、人種や性別、年齢、障害の有無などによるマイノリティ・社会的弱者を守るための運動を指します。
日本語では「政治的正しさ」「政治的妥当性」などと訳されます。アメリカのやりたい放題なポリコレに消費者は口を閉ざしているわけではありません。過去10年間でディズニーはこれまでより進歩的なイメージを創る方向にビジネスを引っ張ってきました。
ストリーミングサービス 「Disney+」の立ち上げ以来、特に左寄りのコンテンツを重視し、子どもには古典を改変したコンテンツを流して親に観てもらえるように説得しています。ところが消費者は、自分たちが慣れ親しんできた古典的なお話やスーパーヒーローまでポリコレになってしまうことに多大な不満を抱いています。
それが揺り戻しを引き起こす状況になっているのです。左系に寄り過ぎたコンテンツは内容が微妙なので、消費者離れを引き起こしています。2022年第4四半期だけでDisney+は200万人以上の加入者を失ったことが発表されています。
古いキャラクターを進歩させ、ドラマや映画から不快なイメージを取り除きましたが、行き過ぎたコンテンツからは面白さが消えたのです。さらにディズニーにはネット上では「反白人プロパガンダ」「Wokeショー」といった呼び方をされるアニメまで登場しています。
このWokeとは、差別問題や人権問題などに対して「自覚している」といった意味で使われるスラングです。またブルース・スミスが監督した 『The ProudFamily: Louder and Prouder』 (全力! プラウドファミリー)では黒人の子ども達が黒人に対する社会の賠償についてラップし、「奴隷がこの国を建てた」といったことが大問題になり反論が起こりました。
さらにこの番組の中では、アフリカ系男性のキャラクターが白人男性の配偶者に白人の心の脆さ (white fragility) について説教するシーンが登場します。これは白人たちが人種問題に向き合えない脆さを表現する言葉で、米国の社会学者ロビンディアンジェロが2018年6月に出版しています。
著書『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』によって定義された著者の造語です。白人は普段から自分の人種に関して考えることがないので、少しでも人種に関する話題を出されるとオーバーリアクションし、自己正当化に走るという論考です。
ところがこの番組は土曜日の朝、小学生向けに放送されるアニメで、番組中にアフリカ系の人が白人を延々と非難するので「過激すぎる、政治的すぎる」と批判の的になりました。さらにディズニーが2022年後半にリリースしたアニメ映画「ストレンジ・ワールド」の興行収入が思わしくなかったのも今のトレンドを象徴しています。
この作品はディズニー初、ゲイのキャラクターが主人公として制作されました。ところが1億2000万ドルから1億3000万ドルの巨大な予算が投入されたにもかかわらず、アメリカの感謝祭でなおかつ週末の興行収入で2000万ドルさえ稼ぎだせず大失敗作品となります。最終的には7300万ドルの収益を上げたにすぎません。
これはディズニーがもっとも失敗した作品である2002年の「トレジャー・プラネット」の1億1000万ドルを下回ってしまいました。一般観客による評価も悪く、映画評価の調査会社のシネマスコア (Cinema Score)で「B」となり、Aマイナスを下回る最初のディズニーアニメーション映画になりました。
「小学校低学年が観るアニメなのに性的なことを語ってほしくない」「性教育が必要なら家でやる」など評価サイトやXを見ると、保護者と思われる人からの苦情が大量に掲載されています。アメリカのXユーザーであるパトリック・ベト・デイビットさんは、「子どもと観にいったら開始10分で映画館を出たい」と言いました。
「ディズニーは誰がお金を払って映画を観にくるのか忘れている」と述べています。このようなディズニーをはじめとする行き過ぎたポリコレコンテンツは 「Get Woke,go broke」、つまり「Wokeをやって破産」とネット上で揶揄されています。
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