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時間栄養学的な視点で夕食の特徴をあげると、夕食はインスリン抵抗性があり、高血糖になりやすい。夕食後から寝る前までに2〜3時間の十分な時間を空けないと、摂取したエネルギー消費が起こらず肥満の要因になっていく。
一般的に習慣として、夕食は3食中で一番たくさんのエネルギーを摂取しやすく、タンパク質も偏って多く摂取しやすい。夜遅い食事は夜型を助長するが、インスリンの作用が関係している。
以上のような特徴を考えると、夕食では高血糖を起こしにくい調理法が良いということになります。ごはんを白米だけで食べるということはあまりないと思いますが、単独で食べるよりは、玄米や大麦などが入ったものにする、炊き込みご飯にする、あるいはカレーライスとしてなど、血糖値を上げにくいものを混ぜて食べる方が良いと考えられています。
また、高カロリー食になるのを防ぐ方が健康には好ましく、そのためにたとえば同じ豚肉でもトンカツではなく、豚肉の冷しゃぶサラダにするなど、カロリーを下げることが必要です。カロリーを抑えてもボリューム感が出る工夫として、スープや豚汁のようなものはおすすめです。
また、主菜や副菜などは取り皿に取り分ける、ビュッフェ形式のようなことはやめて、1人前の盛り付け調理にして、食べる量が見えるようにする方が、摂りすぎを防ぐためにはいいでしょう。ただ、サラダ類やスープ類、根菜の煮物などは栄養学的にはたくさん摂りたいものも多いので、そういうものはお代わり自由にしてもいいかもしれません。
そういった食行動への心理的な工夫も、時間栄養学を考えると、取り入れていった方が良いと思います。鶏の唐揚げなどを夕食に余分に作ってしまったら、余分は出さずに翌朝の朝食に回すと、夕食時には摂り過ぎにならず、朝食時のタンパク質摂取不足の解消にもなります。
夕食がどうしても遅くなる人には、1日4〜6回に分けて少量ずつ摂る分食をすすめていますが、特に夜遅い時間帯に食べる食事には食材や調理の工夫が必要です。米やパン、麺など主食は早い時間に済ませておいて、遅い時間帯は低糖質な食材を使った主菜や副菜を中心に食べるのが良いと考えられます。
また、消化管運動に時間がかからないものを選ぶようにするべきなのですが、たとえばビーフステーキよりはハンバーグ(かたまりより細かくなったもの)、生よりは加熱処理をしたものなどが消化しやすく、消化時間を低減できます。
また、味付けの点からは、香辛料が強い食事は覚醒度が上がり、夜遅い食事の場合は睡眠に不利に働くので注意が必要です。食後のデザートも夕食、特に遅い夕食時は注意する必要があります。生クリームたっぷりのアイスクリームよりは低カロリー系のアイスクリームが良いでしょう。
豆乳や低カロリーの甘味料を使うなど、低カロリーでもおいしい商品も出ています。私は以前、夕食後のデザートでハーゲンダッツを食べていました。すると体重がみるみる増加しました。やはり夕食後のデザートや夜食は、非常に注意して摂食すべきかと思われます。
カルシウム不足といわれる日本人の食生活ですが、時間栄養学的には夜の方が朝よりカルシウムの吸収率が良いと考えられています。そのため、夕食時のカルシウム摂取が有効になるように、調理上の工夫をすると良いと思います。
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどは腸からの吸収率は50%程度ですが、小魚、海藻類、大豆製品では20%程度と低くなっています。調理法によって、これらの小魚や海藻類の吸収率を上げることができます。
酢に含まれていることが多いクエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、カルシウムの吸収を助けるので、魚の南蛮漬けや、小魚と海藻の酢の物などに調理したもので摂取した方が良いと考えられます。カルシウムの吸収にはビタミンDが欠かせません。干し椎茸以外にもビタミンDが強化された牛乳や卵なども市販されていますので上手に使うと良いでしょう。
ところで、ゴボウなどの水溶性食物繊維は、朝の摂取で便通を良くしたり、高血糖を抑えられたりします。調理としては、良質のタンパク質が含まれているイワシなどを組み込んで、イワシとゴボウの煮物や、煮干し入りキンピラなどにして、朝に摂ることもおすすめです。
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