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現在、人類が宇宙をどれだけ遠くまで見通しているのか、もう一つの指標が記載してあったので紹介します。電磁波が宇宙を一様に満たして飛び交っている状態を宇宙背景放射といいます。ビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射については、マイクロ波に限らず様々な波長で宇宙背景放射が存在しています。
「天の川」という言葉は聞いたことがあるでしょう。雲のようにぼうっと淡く光って見える放射を背景放射といいます。天の川もまた背景放射と言えますが、その実体は肉眼では見えない暗い星の集まりです。
銀河円盤の中に住む我々が見ると、空に一筋の川のように見えるものです。同じように、既存の望遠鏡で見てなにも天体が写らない漆黒の空の領域も、我々がまだ検出できない無数の暗い遠方銀河が総体としてぼうっと光っているはずです。
これはつまり、宇宙というのは我々がイメージするような真っ暗なものではないことを意味しています。昼間の空は何色かと聞かれれば、誰もが青と答えるでしょう。一方で、夜空が暗いのは単に我々の目の感度が悪いだけのことであり、きちんと測定すれば一定の明るさで夜空もまた輝いていて、色を持っているはずなのです。
そもそも夜空が暗いということ自体、実は考えてみると不思議なことなのです。星や銀河が一定の密度で宇宙全体に無限に広がっているとします。その場合の宇宙背景放射を計算してみると、無限大に発散してしまうといいます。
夜空は暗いどころか、無限に明るいはずなのです。19世紀の天文学者の名前をとり、これをオルバースのパラドックスと呼んでいます。無論、これは無限に広がる宇宙を前提としており、宇宙が有限であれば話は変わってきます。
現在のビッグバン宇宙論では、空間方向には無限に広がっていても構わないが、宇宙は138億年前に生まれたという時間方向への有限性により、我々が光で見ることのできる宇宙の大きさも有限になります。これによりパラドックスは解決しています。
夜空が暗いというごくありふれた事実が、実はビッグバン宇宙論の傍証を与えているとも言えます。だが一方で、夜空の明るさ、つまり宇宙背景放射の強度は決してゼロではなく、なんらかの値を持っていることになります。
可視光波長域の宇宙背景放射は、銀河系の外にある銀河からの光の総量です。望遠鏡で見ると、このうち何割かは明るい銀河として検出され、残りの暗くて検出できない銀河の光が背景放射となります。当然ながら、その割合は観測の感度に依存します。
肉眼ではぼうっと広がったように見える天の川も、高性能の望遠鏡で見れば星々の集まりであることがわかるように、宇宙を深く見れば見るほど、宇宙背景放射は個々の銀河に分解されて見えることになります。
したがって、人類の最高感度の観測で、宇宙背景放射の何割が銀河に分解されているかは、人類が宇宙をどれほど見通したのかという指標となります。可視光域ではなんと言ってもハッブル宇宙望遠鏡による「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」です。
お隣の近赤外線では地上の大望遠鏡が強く、1999年にすばる望遠鏡で観測された「すばるディープ・フィールド」は現在でも、この波長で最も深く見た宇宙の姿の一つです。日本の科学者は、このハッブルやすばるの深宇宙画像を解析し、宇宙背景放射の何割が銀河に分解されて写っているかを詳しく調べています。
その結果は、実に90パーセント以上もの背景放射光はすでに銀河に分解されているというものでした。背景放射という観点で言えば、人類はすでに宇宙をほぼ見通したと言って差し支えないでしょう。
あまり知られていないのが残念ですが、人類の一つの偉大な到達点と言ってよいかもしれません。さて、「宇宙は何色?」だろうか。昼間の空が青いように、可視光域の宇宙背景放射がゼロでない強度を持つということは、その色があるはずです。
これが実は、クリーム色に近い感じになるといいます。そして想像してみてほしい。宇宙といえば漆黒の闇に星や銀河が浮かんでいるイメージなのですが、よく目をこらせばその漆黒の宇宙空間はクリーム色に輝いているのだといいます。
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