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  三大合併症が起こる理由  仲條拓躬 2025/12/03(水) 20:12 
  我々の使命とは  仲條拓躬 2025/12/01(月) 19:56 
  時空のゆがみで宇宙を見る重力波  仲條拓躬 2025/12/01(月) 19:54 
  ニュートリノは新しい宇宙を見る目  仲條拓躬 2025/12/01(月) 19:53 
  遺伝するがん  仲條拓躬 2025/11/28(金) 21:37 
  初めて遺伝学の真理にたどり着いた  仲條拓躬 2025/11/25(火) 16:19 
  若い人は何が原因で亡くなるのか  仲條拓躬 2025/11/25(火) 16:15 
  がんの転移と肝臓について  仲條拓躬 2025/11/25(火) 16:14 
  アインシュタインの予言  仲條拓躬 2025/11/25(火) 16:13 
  宇宙カレンダーとは  仲條拓躬 2025/11/25(火) 16:11 






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三大合併症が起こる理由
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/12/03(水) 20:12
No. 8066
 
 
糖尿病は血糖値が高い状態が続いてしまう病気ですが、その怖さは、多彩な合併症にあります。なお、合併症とは、ある病気に伴って起こる病気のことです。つまりは、糖尿病に伴って起こる、新たな病気のこと。

糖尿病は初期こそほとんど自覚症状はなく、「糖尿病」と診断されても、痛くもかゆくもないものだから、そのまま放置してしまう人が多いのですが、高血糖状態が長く続くと、血管が傷つき、血流が悪化し、さまざまな合併症を起こすようになります。

なかでも、代表的なのが、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」の三つです。糖尿病に特有の合併症で、三大合併症と呼ばれています。いずれも、長年高血糖状態が続くことで、細い動脈や毛細血管がじわじわとダメージを受け、詰まったり血液が漏れるようになったりした末に起こる病気です。

目の奥にある網膜には、光や色を感じる神経細胞が敷き詰められていて、その神経細胞に酸素と栄養を送るために毛細血管が張り巡らされています。高血糖状態が続くと、まず細い血管からダメージを受けるので、毛細血管が集まっている網膜も、真っ先に影響を受けやすいひとつです。

そうして、網膜に張り巡らされた毛細血管がダメージを受けて詰まったり出血したりして起こるのが糖尿病網膜症です。糖尿病網膜症は、早期にはほとんど自覚症状がありません。気づかないうちに進行していることがあるため、糖尿病の人は眼の状態も定期的に調べることが大切です。

重症化すると、視力が低下したり、飛蚊症といって黒い虫のようなものが動いて見えるようになったり、最悪の場合、失明することもあります。腎臓は、血液をろ過し、必要なものは再び血液として戻し、要らないものは尿として出しています。

ろ過するフィルターの役割を果たしているのが、腎臓の糸球体と呼ばれる部分で、毛細血管が糸玉のように丸まったものです。高血糖状態が続くと、この糸球体にもダメージが生じるので、腎臓のろ過機能が低下してしまいます。そうして、糖尿病腎症を起こすのです。

糖尿病腎症が進むと、本来は体にとって必要なはずのタンパク質が尿に漏れだすようになり、さらに重症化すると、ろ過機能をほとんど果たせなくなり、血液中に老廃物がたまり、尿毒症と呼ばれる症状を引き起こします。

そして腎臓がほとんど機能を果たせなくなると、人工的に血液をろ過する人工透析が必要になります。もうひとつの糖尿病神経障害は、高血糖状態が続くなかで、体の各部分に張り巡らされた末梢神経に酸素と栄養を届ける血管がダメージを受けたり、神経細胞の中に不必要な物質が溜まったりした結果、末梢神経に障害が起こる病気です。

三大合併症のなかでも最もよく起こる合併症です。糖尿病網膜症や糖尿病腎症は初期にはほとんど自覚症状がありませんが、糖尿病神経障害の場合、初期から手足のしびれという形で自覚症状が現れることが多いので、ほかの二つに比べるとご自身で気づきやすいと言えるでしょう。

ただ、神経障害が進むと、感覚が鈍くなるので、痛みや熱さも感じにくくなり、ケガや火傷をしても気づかずに悪化させてしまい、潰瘍ができたり壊疽(組織が腐ってしまうこと)ができたりして、足の一部を切断せざるを得なくなることもあります。

そのほか、糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(足の梗塞のこと)といった動脈硬化をベースとした病気、高脂血症(脂質異常症)、脂肪肝、白内障、感染症、皮膚病(真菌症、潰瘍、水疱症など)、骨減少症、認知症といった病気の発症リスクも増やします。

糖尿病に伴って起こる病気と言えば三大合併症が有名ですが、ありとあらゆる合併症が起こってもおかしくないといいます。現に、多様な病気の発症リスクを引き上げることがさまざまな研究で明らかになっていますし、そもそも糖尿病になるとブドウ糖を正常に使えなくなるわけです。そうすると、各細胞でエネルギーが不足し、良くないことが起こるのは想像に難くありません。


 





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我々の使命とは
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/12/01(月) 19:56
No. 8065
 
 
果たして、アメリカはイランに振り上げた拳を下ろせるのでしょうか?北朝鮮は、相変わらず危ない動きが続いています。今の日本国民は、イランと米国が戦争になっても所詮他人事で税金を使ってアメリカの艦船に給油するくらいで、直接の影響はないと思っているのかな?

まぁ〜それは置いといて、北朝鮮の方は、これ以上追いつめたら、日本は直接の影響を受けるでしょう。北朝鮮の兵力がアメリカ本土を直接攻撃することは難しいので、標的になるのは日本です。日本には、多くの北朝鮮スパイが潜入して工作活動をやっていることは事実です。さらに、中国との関係が険悪ムードです。どうなってゆくのであろうか。

陸続きの韓国を攻撃することは中国やロシアに対しても難民で影響を及ぼすわけだから考えにくいでしょう。となるとターゲットとなるのは日本しかありません。アメリカとの駆け引きの道具として日本を攻撃する可能性はかなり大きいと思います。

一連の国際紛争に対する報道や国全体の動きを見ていると日本人という民族の国際感覚の欠如を感じさせられます。現在アメリカ国内ではベトナム戦争以来、と言われる反戦運動が起こっていますが、それでも百万人規模です。

二億を越えるアメリカの全人口の1パーセントにも満たない人間が反対しているだけで、大半のアメリカ人はイラン攻撃に反対していないのは事実です。日本が大東亜戦争に負けたのは圧倒的な物量の差もありましたが、そういうことを含めた情報戦の差でもあった。

つまり日本は相手側の兵力その他の分析に必要な情報収集が下手であり、分析も不十分であったために相手方の兵力を的確に把握することが出来ず、結果敗戦に繋がったというものです。情報を集めて分析をし、的確な対処方法を講じるという行動が日本人は本当に苦手なようです。島国であるがゆえの国際感覚の欠如、決断力の無さなどが今の日本です。

一言で言えば、日本人は対外的なアピールが下手だということではないでしょうか。過去のイラク攻撃のときでも、イランとの揉め事に関しても世界的に見て日本が最も仲裁役に適していると思うのです。

アルカイダやパレスチナ、その他、中東での紛争には何千年も前から続く宗教戦争的な意味合いが色濃くあり、アメリカと同じキリスト教国のヨーロッパ諸国ではなかなか中立の立場での仲裁は難しいと思われます。日本ならばアメリカとも、中東諸国とも中立の立場で話が出来るハズなのに、アメリカに追随するだけなのです。

特にイラン攻撃問題に関しては国としての態度を決める事すらできない。こういう時こそ世界に対して日本という国の存在をアピールする絶好のチャンスなのに、残念です。こうした政府の態度を批判する事は簡単です。だが、政府というものは国民の命を預かっているのです。命をかけて対処して欲しいのです。

国民一人一人が個人としての存在を自覚し、自分なりの視線、自分なりの方法で情報を集め、分析し、行動するという事ができるようになれば必ず日本は変わります。未来の子供たちにとっても住みやすい国にしなくてはいけないのです。そのためには政治に無関心ではいけません。これは、現在生きる我々の使命なのです。

 





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時空のゆがみで宇宙を見る重力波
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/12/01(月) 19:54
No. 8064
 
 
重力波は、大きく報道されている通り、2015年以降のこの分野の進展はただ怒濤という言葉しか思い当たらないといいます。重力とは時空構造のゆがみであった。なにも物質がない真空であっても、そこにわずかな時空のゆがみがあると、それが波となって光速で伝わることがアインシュタイン方程式から示されます。これが重力波です。

ブラックホールや中性子星などの二つの超高密度星が連星を組んでいると、ぐるぐる回る二つの星の重力のために周囲の時空構造がめまぐるしく変わります。これが重力波となって四方八方にエネルギーを持ち去ることになります。 二つの連星はエネルギーを失うと、その距離を縮めていき、やがて合体して一つになります。

その際に最大強度の重力波が放出される事になります。重力波自体は一般相対論の完成直後の1916年にアインシュタイン自身が予言したものです。そして遠方のブラックホールや中性子星の合体からの重力波を地球でとらえようという試みも長年行われてきました。

一辺数キロメートルの距離で人工レーザー光を飛ばしている状態で、そこに重力波がやってくると、時空のゆがみによってわずかにレーザー光が通過する経路の長さが変わります。これを検出しようというものです。

だが、地球に届く重力波によって空間の長さが変わるその割合はわずかに10の2乗分の1ほどで、数キロメートルの光の経路に生じる長さの変化量は原子核の中にある陽子の大きさのさらに1000分の1という小さなものになります。

1990年代、すでに日米欧でレーザー重力波検出器のプロジェクトが進められていたのですが、正直言って重力波が検出できるのは遠い将来の話という印象でした。当時、暗黒物質の正体解明と重力波の検出と、どちらが早く実現するか、という賭けをする科学者たちがいたといいます。多くの科学者は暗黒物質の方に賭けたといいます。

だが、2000年代に入り、特に米国のLIGO実験で急速な感度向上が実現し、ついに2015年9月、30太陽質量ほどの二つのブラックホールの合体による重力波が検出されてしまいました。LIGOが目標到達感度に達したと聞いてからほどなく、あっけないほど早く実現したという印象でした。

信念を持って大勢で力を合わせれば、人間に不可能な事などないのだという気持ちにさせてくれるほどの快挙と言えます。そしてこの発見が公表されたのは2016年、アインシュタインが重力波を予言してから丁度100年後というのもなにやら出来すぎた話です。

これによって、相対性理論の正しさが改めて証明されるとともに、ブラックホールが本当に存在するという、これまでで最も強力な証明が得られたことになります。そして2017年の夏には、今度は中性子星同士の合体からの重力波が検出されました。

ブラックホール同士の合体では電磁波でなにか光ることは期待できないが、中性子星同士の合体では一部の物質が外に飛び出し、電磁波でも光ることが期待されていました。そして世界中の天文台や人工衛星が望遠鏡を向けたところ、予想通り、中性子星から飛び出した高密度物質が原子核崩壊の熱で温められて光る現象が可視光で観測されました。

星の内部で安定して起こる核融合反応では、原子核として最も安定した元素である鉄までしか生成されていません。だが自然界には、鉄よりはるかに重い金やウランなどの元素が存在します。これらは爆発現象など、なんらかの不安定で突発的な現象から作られる必要があります。その候補として、超新星や連星中性子星合体が長年議論されてきました。

中性子星合体からの可視光放射は、この説を強く裏付けるものとなりました。この数年の重力波天文学の誕生と進展は、物理学や天文学の歴史の中でも数十年に一度あるかないかという、大変なものです。だが、ここまで素晴らしいと少しぐらいケチをつけたくなる科学者がいます。確かに素晴らしい成果だが、あまりに予想通りすぎて面白くないのです。

一般相対性理論はやはり正しい、アインシュタインはやはり偉大だ、というだけでは新しい知見は得られません。太陽からのニュートリノを測ってみたら予想の半分しかなかった、というような予想外のことが起きてくれた方が、研究者は色めき立つものです。

それはどうしてだろう、と考えるところから次の科学の発展が始まるからです。もちろん、重力波天文学はまだ始まったばかりです。いずれ、そのような予想外の展開、例えば一般相対性理論の予想からのズレが検出されるといった驚きのニュースが聞けることを楽しみにしている科学者がいるのです。

 





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ニュートリノは新しい宇宙を見る目
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/12/01(月) 19:53
No. 8063
 
 
宇宙を見る目はいまや電磁波だけではありません。光速でまっすぐに進む波や粒子であれば、光と同じように宇宙を見ることができるはずでしょう。そのような宇宙からのメッセンジャーとして長年期待されてきたのがニュートリノと重力波です。

両者とも物質に対する透過力が強く、高密度天体の中心部など、光では吸収されてしまって見えない領域をさぐることができます。だが、透過力が強いということは物質との相互作用が弱いということでもあり、それだけ検出器に与える信号も小さくなります。

利点は欠点の裏返しということでしょう。それでも宇宙からのニュートリノは1970年代にはすでに検出されていました。太陽からのニュートリノです。太陽のエネルギー源は水素原子核(=陽子) 四つを、2個の陽子と2個の中性子からなるヘリウム原子核に変える核融合だから、2個の陽子を中性子に変える必要があります。

このベータ崩壊とは逆の反応により、必ず電子ニュートリノが2個放出されるはずです。これを初めてとらえたのは米国サウスダコタ州のホメステイク鉱山地下に設置された、テトラクロロエチレンを蓄えた巨大なタンクでした。

この物質はドライクリーニングでも使われる安価なものであり、塩素を含んでいます。ニュートリノがやってきて塩素と反応すると、今度は逆に塩素原子核中の中性子が陽子に変わり、原子番号が一つ増えたアルゴンに変わります。これを化学的に検出したのです。

この実験を率いたレイモンド・デービスには小柴昌俊氏とともに2002年のノーベル物理学賞が与えられました。だが、この栄光の実験も、実現までにはいろいろと障害があったといいます。その一つは、予算獲得までに浴びた「出ているとわかっているニュートリノを検出して、それで新たになにがわかるのか」という批判であったというのです。

当時すでに、太陽のエネルギー源は疑いなく水素の核融合であると考えられ、そこからニュートリノが出ることも、原子核物理学の知識から当然のことと思われたのです。大きな予算を使う巨大科学実験が認められる際に、その科学的意義について厳しい審査が行われるのは当然です。その意味で、この批判は決して間違ったものではないでしょう。

だが、結果的には、自然界とはこのような安易な人間の予想をはるかに上回るものであることを証明することとなったのです。実際に太陽からのニュートリノ放出量を測ってみると、予想の半分程度しかなかったのです。この不可思議な結果が現在ではニュートリノ振動という現象で理解されていることは有名です。

ニュートリノに質量があると、飛んでいるうちにニュートリノの種類が変わることで、あたかも減ったように見えます。「あたりまえと思われていること」をきちんと検証しようという姿勢が、ニュートリノの質量の発見という基礎物理学上の大成果に繋がった事になる。

太陽ニュートリノに続いて、1987年には超新星からのニュートリノも検出され、ニュートリノ天文学の幕が開きました。ただし銀河系や、(超新星1987Aが発生した) 大マゼラン雲という、宇宙の中で見れば我々のごく近傍で超新星爆発が起きなければニュートリノは検出できません。そのような現象は数十年に一度と言われています。

事実、超新星1987Aを検出した旧カミオカンデより10倍大きなスーパーカミオカンデが稼働してすでに20年以上が経ちますが、その後、いまだに超新星からのニュートリノは検出されていません。もし銀河系内で起きてくれれば、実に数千個ものニュートリノが検出され、天文学者が狂喜乱舞するはずでしょう。

近くで起きた一つの超新星からのニュートリノをとらえるというのではなく、宇宙の長い歴史の中で蓄積されてきたニュートリノをとらえるという可能性も考えられています。初代の星や銀河が形成されて以来、無数の超新星爆発が無数の銀河で発生し、その度に、ニュートリノが放出されてきました。そのようなニュートリノは一部屋に一つほどの密度で、この宇宙を光速で飛び交っているはずでしょう。

 





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遺伝するがん
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/28(金) 21:37
No. 8062
 
 
2013年、ハリウッドの女優、アンジェリーナ・ジョリーは、乳がんを予防するため両側の乳房を切除したことを公表しました。その2年後には、卵巣癌を予防するため、卵巣を摘出する手術も受けました。その時点では乳がんでも卵巣がんでもなかったのですが、ガンになる危険性が高いと判断されたからです。

ではなぜ、「がんになる危険性が高い」とわかったのだろうか?遺伝学的検査で、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」という病気であることが判明したからです。主にBRCAという遺伝子に変異(特定の変化)があるために、細胞が癌化しやすくなる病気です。

BRCA遺伝子にはBRCA1とBRCA2の二種類があり、この遺伝子に変異を持つ人が70歳までに乳がんにかかる確率は、それぞれ57パーセントと40パーセント、卵巣がんにかかる確率は、それぞれ40パーセントと18パーセントとかなり高いのです。

また、乳がんにかかる年齢も一般的な人口より若い傾向にあり、また両側の乳房に発生する人は三割に及びます。この変異遺伝子は、一定の確率で子に引き継がれます。よって遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、「遺伝するがん」の一つです。

他にも、このタイプの病気がいくつかあります。 家族性腺腫性ポリポーシスは、60歳までに100パーセント大腸がんにかかる病気です。APCという遺伝子に変異があるために、大腸粘膜の細胞ががん化しやすいのです。大腸がんを予防するため、20代で大腸をすべて摘出することが推奨されています。

また、リンチ症候群は、大腸がんや子宮がん、卵巣がん、胃がんなど、様々な癌にかかりやすい病気です。「ミスマッチ修復遺伝子」というグループの遺伝子に変異があるため、全身のさまざまな細胞ががん化しやすくなっています。

誤解されやすいのですが、この種の遺伝するがんは、俗にいう「がん家系」のことではありません。家族内にがん患者が多いだけで、特定の遺伝子が原因の遺伝性疾患を疑うことはないのです。

二人に一人は癌に罹患するといわれるほど癌患者が多い時代で、かつ長年の生活習慣が似た家族内において、複数の人が癌にかかることは全く珍しくないからです。よって、家族の病歴などから、遺伝性のがんが強く疑われる限られた場合のみ、厳密な基準に基づいて遺伝学的検査が行われるのが通例です。

癌にかかりやすい遺伝子変異の存在は、血縁関係にある人たちの心理にも、本人の結婚や就職などのライフイベントにも影響を与えることでしょう。専門医や専門看護師、 認定遺伝カウンセラーなどと、時間をかけて十分なカウンセリングを行った上で、慎重に検査を進めていくのが一般的です。

我々の体は、受精卵というたった一つの細胞からできたものです。体を構成するすべての細胞は、一つの受精卵が分裂した結果として生まれたものです。各細胞には、体を形作る設計図があります。人間の設計図はDNA(デオキシリボ核酸)という化学物質でできていて、これが暗号のように情報を保存しています。

だが、改めて自分の体を見ると、もともとたった一つの細胞から分かれてできたという事実を疑ってしまうほど、各部位が違ったつくりをしています。目、鼻、口、手足、胃や大腸、肺、心臓など、それぞれがあまりにも異なる外観と機能を持っています。それゆえ、これらの臓器を構成する細胞は、それぞれが別々の設計図を持っていると誤解しがちです。

つまり、目の細胞たちは目専用の設計図を持ち、胃の細胞たちは胃専用の設計図を持つ、と考える人が多いのです。だが、そういうわけではないのです。我々の体を構成するすべての細胞は、オリジナルの受精卵と全く同じ設計図を持っています。

ではなぜ、これほど異なる機能を持つ臓器が出来上がるのか。実は、それぞれの細胞が設計図のどこを参照するかが違うからです。ざっくり説明するならば、分厚い冊子のような設計図のうち「大腸では第3章と第30章と第300章を参照し、それ以外は参照しない」といったルールが決まっているのです。

ここでいう「第3章」「第30章」「第300章」という各章が、各種の遺伝子に相当します。人間の場合、章は全部で約2万2000あります。厳密には、章立てされた2万2000セクションは冊子全体のわずか数パーセントほどを占め、残りは「前書き」とか「後書き」とか「索引」とか、補助的な頁があるのです。

少しややこしい話ですが、重要なのは、すべての細胞が同じ設計図、同じ遺伝子を持っていること、置かれた場所で必要な遺伝子だけが働き、不要な遺伝子は働かないということです。細胞の中で遺伝子は高度に制御され、各々がスイッチオンあるいはオフになることで、異なる振る舞いができるのです。

(※赤血球と血小板は核がないため遺伝情報を持たない。また、精子と卵子はそれぞれ次世代に引き継ぐ半セットの遺伝情報を持つため、例外です。)

 





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初めて遺伝学の真理にたどり着いた
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/25(火) 16:19
No. 8061
 
 
人間は46本の染色体を持っており、遺伝子は各染色体に分かれて存在しています。染色体は、父親から23本、母親から23本引き継ぎ、これらは対になっています。自分の染色体もまた、半分は子に引き継がれるのです。

尚、生物学的な男女の差は、23番目の「性染色体」にあります。男はX染色体とY染色体、女はX染色体が二本の組み合わせです。つまり、父親のXYの一方と、母親のXXの一方を引き継いで、子は「XY」か「XX」のどちらかの組み合わせになります。

このシンプルな理屈によって、男が生まれる確率と女が生まれる確率は等しくなるのです。ちなみに、染色体が一本余分にある、つまり全部で47本になる病気がいくつかあります。これを「トリソミー」と呼びます。もっとも多いのは21番染色体が1本多い病気で、二トリソミー(ダウン症候群)と呼ばれています。

他に多いのは、一三トリソミー(パトウ症候群)と、一八トリソミー(エドワーズ症候群)です。一方の親の染色体がちょうど半分に分離せず、子に24本引き継がれると、こうした先天性の病気が起こります。トリソミー以外にも、「染色体の異常」は23種のどれにも起こりますが、すべてが病気を起こすのではありません。

ほとんどが死産か流産になって出生できないため、「病気」とは定義されないのです。実際、すべての妊娠の70〜80パーセントは、主に染色体異常によって気づかれないうちに流産として終わるともいわれています。子供が生まれてくること自体が奇跡的なのです。

親子の目や鼻の形が似ていたり、体格が似ていたりすることは、古代から当たり前のように知られていました。だが、かつては父と母の持つ特徴が混ざり合って子の特徴を形作ると考えられていました。つまり、青と赤の絵の具を混ぜれば紫になるように、均等に混合された新たな特徴が生まれる、というイメージで捉えられていたのです。

1866年、オーストリアの修道士グレゴール・メンデルは、修道院の庭で育てた3万本近くものエンドウマメを掛け合わせ、世界で初めて遺伝学の真理にたどり着いたのです。種の形状、花の色、背の高さなど、両親のそれぞれが持つ特徴は、子に継承されるときに混ざり合って中間的な特徴に変化するのではないというのです。

何らかの「粒子」のような、明確な単位を持って親から子に継承され、単位そのものは変化しないのです。この「粒子」の組み合わせによってエンドウマメの特徴は決まり、その継承には数学的な法則性があります。のちに「メンデルの法則」と呼ばれる、極めて重要な発見でした。

だが、当時この学説は全く理解されず、むしろ軽蔑されました。1884年、その功績を認められないままメンデルはこの世を去ったのです。メンデルが存在を信じて疑わなかった「粒子」的な概念は、のちに「遺伝子」と呼ばれることになります。

1900年、三人の植物学者、オランダのユーゴー・ド・フリース、ドイツのカール・エーリヒ・コレンス、オーストリアのエーリヒ・フォン・チェルマクが、遺伝にかかわる重要な法則性を独立に発表しました。

だが、その法則とはまさに、約半世紀も前にすでにメンデルによって発見され、報告されていたものでした。歴史に埋もれていたメンデルの法則は、このとき「再発見」されたのです。では、「遺伝子」は実態としてどのように体内に存在しているのか。

その答えは、1915年までに明らかになりました。 染色体が発見され、それが遺伝情報を運ぶ物質であることが明らかになったのです。ショウジョウバエを使ってこのことを証明したトマス・ハント・モーガンは、1933年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。染色体がタンパク質とDNAでできているという事実は、1920年代に証明されました。

だが、当時はまだDNAの構造は全くわかっていなかったのです。1953年、ケンブリッジ大学の科学者ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックは、物理学者モーリス・ウィルキンスや化学者ロザリンド・フランクリンが撮影したX線写真を参照し、DNAが二重らせん構造であることを突き止めました。

1961年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究グループが、フェニルアラニンを指定するコドンが「UUU」であることを初めて発見しました。これを皮切りに、各コドンとアミノ酸の関係がすべて解明されました。

このとき人類は、生命体に組み込まれた暗号を解読した初めての存在になったのです。1962年、ワトソン、クリック、ウィルキンスはDNAの構造を解析した功績によりノーベル医学生理学賞を受賞しました。

1968年、遺伝暗号とタンパク質合成のしくみを解読した功績により、マーシャル・ニーレンバーグ、ロバート・ホリー、ハー・ゴビンド・コラナはノーベル医学生理学賞を受賞しました。ここまでの一連の発見は、二十世紀以降のたった数十年間でなされたものだったのです。

「子は親に似る」という事実は、物理的・化学的に説明可能な現象でした。そのプロセスに、超自然的な作用は何一つとして介在しないのです。ただ美しく、整然たるサイエンスが存在するだけなのでした。

 





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若い人は何が原因で亡くなるのか
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/25(火) 16:15
No. 8060
 
 
不謹慎な表現ですが、医療の進歩によって人体が長持ちするようになったおかげで、相対的にガンで死亡する割合が増えたのです。昔はなぜガンで死ぬ人が少なかったのか?という質問の答えは、がんになる前に他の病気で死んでいたからです。

また、癌による死亡率が年々増えることに対し、がん治療は全く進歩していないといった指摘が見られますが、これは誤りでしょう。高齢化によって高齢者の割合が増えれば、必然的にがんで死ぬ人の数は増えます。大学生一万人と、高齢者施設の入所者一万人の間でがん死亡者の割合を比較すると、後者のほうが大きくなるのは当たり前でしょう。

よって、がん治療が進歩したかどうかを知りたければ、年齢構成が等しくなるように調整して比較しなければならないのです。この際に用いるのが「年齢調整死亡率」です。年齢調整死亡率の推移を見れば、癌による死亡率は年々減少していることが容易にわかります。

実際、がん治療は近年驚くほど進歩しました。新たな抗がん剤が次々に生まれ、手術の質が向上し、放射線治療や免疫療法など、使える武器がますます増えてきたからです。さて、がんを除いて、常に死因の上位を占めているのが心疾患と脳血管疾患(脳卒中)です。

これらで亡くなる人の大部分は、生活習慣病が背景にあります。生活習慣病とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い病気)など、生活習慣と関連して発症する病気のことを指します。かつて生活習慣病は、「成人病」と呼ばれていました。歳をとればやむを得ず現れる、防ぎようのない変化だと考えられていたためです。

しかし、食習慣や運動習慣の改善、肥満の解消、禁煙などによる病気の予防を重視する観点から、1996年頃に「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。生活習慣病に共通するのは、自覚症状がなく、気づかないうちにゆっくりと体を蝕んでいくという性質です。高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などは動脈硬化を加速させます。

これが心臓や脳の血管にダメージを与え、心筋梗塞や脳卒中といった致命的な病気を引き起こすのです。もちろん、これら以外にも、肝臓や腎臓、肺など、生活習慣病によって蝕まれる臓器は多くあります。長年のダメージが体に蓄積し、数年、数十年という経過の中で重い病気を発症するのです。

ただし、生活習慣病の原因は、生活習慣だけにあるのではありません。遺伝的な要因や環境要因なども、生活習慣病の発症に大きくかかわる因子だからです。病気になったのは自己責任といった偏見はよくあるのですが、病気の原因はそれほどシンプルなものではありません。なお、生活習慣病という概念にはがんも含むのが一般的です。

特に喫煙は、様々なガンを引き起こす生活習慣です。がんになった人のうち男性で30パーセント、女性で5パーセントは喫煙が原因とされ、喫煙者は非喫煙者より寿命が10年短く、一本タバコを吸うたび寿命が11分短くなるといわれています。

どれほど健康な人でも、歳をとれば必ず死にます。人が死ぬ大きな原因に加齢があることを忘れてはならないでしょう。現在、死因の上位には老衰と肺炎が含まれており、これらは年々増加していますが、いずれも加齢が主な原因でしょう。

老衰はもちろん加齢そのものですが、肺炎についても、医療水準の高い国では主に高齢者の命を奪う病気です。このことは、年齢別の肺炎死亡率を見るとよくわかります。肺炎による死亡は大半が70歳代以降に起こります。

一方で、若い人は高齢者に比べ肺炎による死亡率が圧倒的に低いです。年齢とともに呼吸器の機能が落ちて肺炎になりやすくなる上、肺炎にかかった後も、抵抗力の低さゆえに致命的になりやすいのです。

また、食べたものが気道に入って起こる肺炎を誤嚥性肺炎という。「誤嚥」とは、「誤って嚥下すること」、つまり、本来食道に入らなければならない食べものが気管側に入ってしまうことです。若い人であれば「咳嗽反射」というしくみによってこれを追い出すことができます。いわゆる、「むせ」です。

一方、高齢になるとこの機能が衰えるため、そのまま肺炎を起こしやすいのです。こうした誤嚥が原因である肺炎と、そうでない肺炎を厳密に区別するのが難しいことも多いです。その点でも、高齢者の肺炎は「高齢であること」そのものが原因と考えられるケースが多く、その場合は老衰と医学的には区別しにくいといいます。

以上のことを表現するなら「今の日本人の多くは、癌か生活習慣病か加齢で亡くなる」といえます。今後も、この傾向は大きくは変わらないといいます。なお、人が死亡する確率は年齢が上がるほど高くなるため、死因の上位を見るだけでは、必然的に「中高年層は何が原因で亡くなるか」しか見えてこないのです。この点には注意が必要でしょう。

では、若い人は何が原因で亡くなるのだろうか?10歳代〜30歳代の死因一覧を見ると、国民全体の順位には反映されない、全く違った死因が並んでいることに気づきます。15歳から39歳までの死因第一位は自殺です。

また、活動性の高いこの年代では、「不慮の事故」が上位に入るのも特徴的です。そしてこれらの死は、社会的な対策で防がねばならないといえます。このように、「人は何が原因で死を迎えるのか」という命題に答えるには、年代ごとに異なる特徴を理解した上で議論する必要があるのです。

 





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がんの転移と肝臓について
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/25(火) 16:14
No. 8059
 
 
癌が他の臓器に転移することを遠隔転移といいますが、消化器にできたガンの遠隔転移先は、圧倒的に肝臓が多いといいます。例えば、遠隔転移があるステージ4の大腸がんは、その転移先の約半数が肝臓だといいます。

胃がんや食道がん、膵臓がんも、転移先としては肝臓が非常に多いです。なぜ、このように転移する臓器が偏るのだろうか? 全身にこれだけ多くの臓器があるのに、満遍なく転移が起こらないのはなぜだろうか?それには、実に単純な理由がありました。

消化器を流れる血液が、その次に向かう主な行き先が肝臓だからです。癌が他の臓器に転移を起こすのは、がん細胞が近くの血管に入って、転移先に流れ着くからです。消化器にできたガンは、必然的に肝臓へ流れ着くのです。

消化器から集められた血液は、肝臓へ向かう太い血管を経由して肝臓内に入り込みます。血流に乗ったがん細胞も一緒に肝臓に入り、そこで生着し、成長して再び腫瘍をつくるのです。消化器に流れる血液を肝臓が一手に引き受ける仕組みは、栄養の吸収という観点から都合がいいのです。

食べたものは様々な酵素によって分解され、消化管の粘膜を通して血管内に吸収されます。これが血流に乗って肝臓に流れ着き、肝臓の中で利用可能な形に変換されたり、必要なときに備えて貯蔵されたりするのです。

肝臓が人体の物流基地とか化学工場などと呼ばれる所以です。例えば、ブドウ糖は肝臓でグリコーゲンという貯蔵に適した形に変化します。必要時にエネルギーとして使えるよう保存するのです。また、アルブミンやフィブリノゲンなど、人体に必須のタンパク質も肝臓で生成されます。これらの原料は、食べたものから吸収した各種のアミノ酸です。

各種のビタミンも肝臓に貯蔵され、必要時に利用可能な形に変換されます。まさに化学工場たる肝臓の機能を考えれば、原料が即座に肝臓に運ばれる物流システムは、極めて効率的といえるのです。ちなみに、肝硬変で肝臓の機能が低下すると、夜食が必要になります。これを夜食療法や「Late evening snack (LES)」といいます。

健康な人なら、夕食後から翌朝まで全く食事を摂らなくても何ら問題ないでしょう。これだけ長時間絶食しても体に負担がないのは、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンが必要に応じてブドウ糖に変換され、エネルギー源になるからです。

肝臓の機能が低下すると、グリコーゲンの貯蔵量が少なくなり、エネルギーが欠乏しやすくなります。一晩寝るだけで飢餓状態になってしまい、体に大きな負担を与えることになるのです。肝硬変の人のたった一晩の絶食は、健康な人が2、3日間絶食した状態に相当するといわれています。

食べものが分解されてできる老廃物は、時に人体に有害なことがあります。こうした物質の「解毒」も肝臓の大切な働きです。中でも代表的な老廃物が、窒素代謝物であるアンモニアです。人間に限らず、あらゆる動物にとってアンモニアは有毒な物質です。

だが、タンパク質(アミノ酸)をエネルギー源として分解すると、どうしてもアンモニアが産生されてしまいます。そこで、これを無害な形に変え、体外に排出するしくみが必要なのです。肝臓では、アンモニアを無害な尿素に変えることができます。

このしくみを「尿素サイクル」と呼びます。複数の酵素がかかわる化学反応です。アンモニアを尿素につくり替えることで、尿の一部として安全に排出できるのです。肝硬変など、重度の肝臓の病気で肝機能が低下すると、体内に異常にアンモニアが蓄積します。

脳はアンモニアによってダメージを受けやすいため、血液中のアンモニアが増えると昏睡状態に陥ってしまうことがあります。これを「肝性脳症」といいます。また、生まれつき尿素サイクルに異常がある病気を「尿素サイクル異常症」と総称します。

厚生労働省の指定難病の一つです。体内にアンモニアが蓄積し、意識障害や痙攣、発達障害など、さまざまな問題を引き起こす病気です。こうした病気の成り立ちを知れば、アンモニアを解毒するという肝臓の機能の大切さがよくわかることでしょう。

 





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アインシュタインの予言
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/25(火) 16:13
No. 8058
 
 
人類は発見の旅のなかで、多くの逆転劇を演じてきました。最近でも、アインシュタインが不可能と断じたことを実現しています。アインシュタインは人間の能力を低く見積もっていたのです。その轍を踏むべきではない。宇宙を時空の海に見立てたのはアインシュタインが最初です。

物質がつくり出すさざ波は、時空を伝わっていくとアインシュタイン考えました。そして1916年、宇宙のはるかかなたで起きる星の大爆発などが、時空のゆがみであるさざ波、重力波をつくり出すと仮説を立てたのです。

だがアインシュタインにしては珍しく、想像はここで止まっています。重力波の存在を立証する実験は、実現不可能だと切り捨てたのです。それは遠い銀河から、地球にいる人間の髪の毛1本の幅を測るようなもの。広大な宇宙を渡ってくるあいだに、重力波は弱くなって検知できなくなると考えたのです。

それから100年、理論物理中学と実験物理学の世界では、重力波の存在を裏づける決定的な証拠を見つけようと奮闘を続けました。目指す証拠はとにかく小さい。どれぐらい小さいかというと、原子よりも、素粒子よりも小さい。陽子1個の直径の1万分の1です。

そんな小さな粒が、10億光年離れた場所で起きた2個のブラックホールの衝突で生まれたのです。1967年、科学者と技術者が一つのプロジェクトに着手しました。米国のレーザー干渉計型重力波検出器(LIGO)です。

10億光年以上離れた所の変化も検知できる超高感度の検出器2台を使って、時空を揺るがす大イベント、例えばブラックホール同士の衝突をとらえるのです。二つのブラックホールがぶつかると、時空のツナミが発生して空間が全方向に拡張します。

時間も進み方が遅くなり、その後、いったん加速してまた減速するを繰り返す。LIGOは長さ4キロメートル。かすかな音を聞きとるには、大きな耳が必要なのです。雑音と区別して正確にとらえるために2台目も用意され、ルイジアナ州リビングストンと、ワシントン州ハンフォードにそれぞれ設置されました。

波が到達するわずかな時間差をもとに、ブラックホールの衝突が起きた場所をはじき出します。重力波も海の波と同じで、移動とともに弱くなります。アインシュタインが画期的な予言をした1世紀前、重力波はまだ地球から約100光年離れた所で、天の川銀河内の黄色い恒星HD 37124とその惑星や衛星に押し寄せているところでした。

それを地球上で確認できるなんて、当時誰も思わなかったでしょう。かつて強大だった重力波も、LIGOに届くころには微弱になっていました。それでも重力波の存在を立派に証明し、ブラックホールの存在を初めて直接裏づけることができたのです。この功績が評価されて、中心となった科学者3名は2017年にノーベル物理学賞を受賞しました。

50年の歳月をかけて成果を得た LIGO のように、科学には世代を継いで行なわれる野心的な試みがいくつもあるのです。それは天を衝く大聖堂の建設にも似ています。人類全体の大事業のために、個を捨てて献身する人たちがいると思うと、心に希望が湧いてきます。

 





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宇宙カレンダーとは
   投稿者: 仲條拓躬    
2025/11/25(火) 16:11
No. 8057
 
 
科学が語る時間の物語は138億年とあまりにも長いので、人間の感覚に置き換える必要があるでしょう。浜岡原発には宇宙カレンダーというものが展示されていました。宇宙カレンダーは、その物語を地球の1年でわかりやすく表わしたものです。

1月1日のビッグバンで幕を開け、12月31日の真夜中で終わる。1カ月は11億年強、1日は3800万年です。1時間は200万年ほど、1分は2万6000年、1秒は440年。ガリレオが望遠鏡で人類初の天体観測を行なってから、まだ1秒も経過していません。宇宙カレンダーに意味があるのはそこでしょう。

宇宙が始まって最初の30億年は、地球は存在していませんでした。全体の3分の2を過ぎたあたり、カレンダーでは夏も終わりかけの8月31日に、太陽の周りを回るガスと塵の円盤から我々の惑星が出来上がったのです。

太陽でさえ、宇宙の歴史のなかでは、存在しなかった時代が圧倒的に長いです。これでは謙虚にならざるを得ないでしょう。地球は出来てから最初の10億年間、激しい攻撃を受けることが多かった。 前半は、小天体との衝突によって成長しながら、軌道上に残る小天体を排除していった。後半は、木星と土星が引き起こした大混乱のあおりを受けた。

太陽系の中でも巨大な両者の公転軌道が変化し、その重力の影響を受けた小惑星が惑星や衛星に衝突したのです。いわゆる後期重爆撃期です。後期重爆撃期は、地球の海底で生命が芽生え始めたころも続いていました。

宇宙にほかの生命体がいるかもと考える人たちにとって、これは心強い。太陽系の惑星の物語が、宇宙全体にも通用するかもしれないからです。地球に続いた激しい攻撃は、生命の原材料と、生命を誕生させるのに必要な熱を供給していたとも考えられています。

地球上のすべての生命体は、一つの起源から誕生したと考えられています。始まりは宇宙カレンダーの9月15日、荒廃した高層ビルのように岩山が立ち並ぶ、真っ暗な深海の底だったと考えられます。誕生した最初の生命が持っていたのが、仲間を次々と増やすための複写メカニズムです。

それが二重螺旋の形をした原子の集まり、DNAです。DNAは完璧でない点が最大の強みで、ときに複写に失敗したり、宇宙線で傷ついたりします。偶発的に起きるそんな変異が、より繁栄する生命体を生み出すのです。これがいわゆる自然選択による進化です。

二重螺旋のはしごは、横木が増えてどんどん長くなっていきました。単細胞生命が複雑化し、我々が肉眼で観察できる大きさの植物に進化するまで30億年程度かかっています。もっとも我々はまだ存在していなかったのですが。単細胞の頃から生物は「食べる。食べない」ことを知っており、意識らしきものをもっていたとされています。

 



 

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