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遠山ただに深い影となる 静まりかへるもやの大樹 仕事ひとしきり終へたゆふぞら やり切れぬ鼓動が脈うつてゐる のんべんだらり冬深うなるばかり 朝の陽眩しく旅へ出ること考へてゐる 金催促の手紙よこして冬陽あたつてゐる 吹きこぼれてしまつた朝の牛乳 足並そろへて麦の穂ゆたか どこぞか冬香る此処なふるさと けさの夢うつとり背伸びするさへ 体動かすしかない馬鹿で冬の汗かく 冬が乾燥してゐる朝の傷固くなつてる やうやく木枯らしが来てなにか倒された めつきり冬風となつて雑木林と吹かるる がたつく机に肘ついて昏れる 冬陽ふりかかる柵にて瞬きいくつもする 一日床にゐて惜しい陽が皆去つてしまつた 一枝の花もなくて冬めくばかり なんべん来てもおんなじことの朝がぐるり 泣くことも厭はず冬のしぐれか 兄妹ともに金のないこと笑ひあつてる あつい湯が冷めきつてゐる夜ふける 殴ることこらへて母の小言きいてる さへづる空もなくて小鳥暇してゐる 誰のものとも知れず口笛きいてゐる みな働きに出て仕舞い一人貸しきつてる
..2017/12/07(木) 14:32 No.749
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