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春へこつそり手紙かいてゐる 脈うつ心臓が春よ来いとばかり 石ころ踏みにじつて他愛ない話し 届かぬ手紙のつたなさ書けなくなる なにかやり残した瞼うすくあいてる 泳げない鳥で水面はためいてる 嘴ついて波紋つくり居る 川面浅い藻がみんな透けてゐる 光りの中泳ぐ鴨よふりかへる おそい朝の灰をこぼしてしまつた 燃え殻はかなくも夜の帳 ともかくも存在の影うすく曳いてる わが身可愛さの湯船あたためておく 暮れてしまつて一つの灯がふらついてる 根も葉もなくて想念夜ふかし 畜生のかなしさ急ぎたまへる いつしか注いだ水が褪せてくる 飲みさしの底へばりついてる 灯の下ひとへに影つくり なにも知らない手の握りしめてもみる
..2017/12/07(木) 14:34 No.751
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