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小さな花瓶に朝が冷えている うたた寝ゆっくり溶けている氷 うすいひかりに夏の感傷吹きつける パンクした自転車で夏を通過している みんな同じような愚かさかかえて朝露 戻ってきた故郷にうすい陽がさす 一生も一日も長すぎる窓の手の跡 なんとはなしに暮れて散りそうな若葉ある 煙草もなくて凌げぬふたりだ 遠目に見ている花のうつくしい 親不孝のそのただ中にいて夕空 かなしみの分岐にやがてちぎれてゆく青は 貧しい心のまま起きておる 錆びついた蛇口が夕陽に映える さみしい気分がつづいている日盛り 星空あいている扉がひとつある 遠くエネオスの灯りがさみしい田舎 一つ池をはさんで団地の灯り 無人駅の木陰にたまる人々だ ふと目をはなすとしずかすぎる部屋だ 死期を待つように朝の一服 うすい珈琲と外の日差しに出ている 吐くほど飲んで朝になりたい月夜 月も映さない部屋で顔赤くしている さみしく明け暮れて盆まつりの提灯 かすかなる水音に吠える夏だ
..2020/08/30(日) 21:59 No.804
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