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想念やまず終ぞ夜明くる 母が帰つた夜の鍵音 水鳥さへづりのみくれる よくしやべる母と部屋の暖とる 手さぐり侘びしい火をつのる 暖とる暫しふるへてゐる おまへが映る夏を溯り こちら向き柵に手づたいして見てゐる 一日ぐうたらな腹を空かしてゐる 片つぽの鳥が死んだ朝だつた 欠けた月と待たされてゐる いろいろ見て歩りく町のあかるさ 山のにぎはひはお祭りかへる人ら ふつくら花弁つけてゐる茎のまがり ざらつく砂の辺ひそかに咲いた はやばや冬支度の樹々つらなり 幼子駆けずり昏れてしまつた 明け方けはしく父の念仏 あかね雲遠くへいつてしまつた そこへ一座の鷺が来た みかづき夜の星またたく千歳 ほんにあえかにうすべに咲いた くりかへし落ち葉して役目終へてゐる
..2017/12/07(木) 14:34 No.752
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