柳さんへ
投稿者: みずほ
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2011/04/22(金) 10:55 No. 2700 |
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柳さん、はじめまして。 デビューされた頃からずっとファンですが、最近読書から遠ざかっており、しばらく作品を拝読していませんでした。
おととい20日、なぜかふと、柳さんの近況が気になり、ネット検索をしたところ、柳さんのブログとこちらのサイトを見つけました。 ブログを読んで驚きました。20日は東さんの命日だったのですね。 知りませんでした…何かに導かれたとしか思えません。
そして、ブログでの虐待騒動から、「ファミリーシークレット」出版までの経緯も、ネットではじめて知りました。 誤解でしたら申し訳ないのですが、一連の経緯は、「ファミリーシークレット」の販売戦略としてはたいへん見事だと思いました。 皮肉や批判ではなく、実際私も、読んでみたくて矢も盾もたまらず、早速注文しました。 ブログや週刊誌の取材、テレビ出演などすべてが柳さんの表現活動であり、その結果人々が、毀誉褒貶含めて柳さんの動向から目を離せなくなるならば、それは表現者としては、大成功といえるのではないでしょうか?
私は、柳さんの、ご自身の存在すべてを賭けた表現活動に、いつも畏敬の念を覚えております。 「私の闇で、あなたの闇を照らしたい」それができる希有な存在として、私にとって、また人々にとってかけがえのない存在だと感じています。
実は私は、少女時代に、神戸児童連続殺傷事件と同質の事件を起こしており、殺人には至らなかったので大事にはならなかったのですが、数人の友人を、精神的にも肉体的にも傷つけた過去があります。 おそらく、少年と同じ性衝動を持っていましたが、早めに発覚したことと、女性であったことが幸いして、現在は夫と子供とともに平凡に暮らしています。 でも、あの事件が起こってから、私の少女時代について書くことが、社会が犯人の少年を理解する一助になるのではないか…という考えが頭から離れません。 しかし、「やっていない」と言い張った私を信じてくれている両親や、家族のことを考えると、とても書くことができない…何よりも、自分を見る世間の目が変わることが恐ろしいのです。
柳さんは、ご自身をあえて反道徳的なポジションに置くことで、人々の闇を照らしていらっしゃる。 本当に尊敬します。 勇気と潔さが、私には清々しく見えます。
「ファミリーシークレット」明日届くと思います。 楽しみに読ませていただきます。
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投稿者: みずほ ..2011/04/25(月) 11:19 No.2701 |
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二日間肌身離さず、育児と仕事の合間に、それこそ車の中で信号待ちのつかの間にも読み続け、今朝読了しました。
刊行されてすぐに読まなくてほんとうに良かった。 もし当時読んでいたら、柳さんの自殺を本気で心配しなければならなかったでしょう。 残酷な本でした。 「作家・柳美里」の死を意味する内容だと感じました。
柳さんは、私の中では三島由紀夫と似たところがあると感じています。 虚構の中で生き、虚構の中でしか生きられなかったひと。演技でしか、自分を表現することができなかったひと。感情や現実感を、最後まで自分のものとして感じられなかったひと。 その空虚を埋めるには、書くしかなかった…三島由紀夫はそういう作家だと思っています。 そして、「作家・三島由紀夫」を完遂するためには、ああいう死に方しかできなかった。
私の人生も、父の嘘(欺瞞)の上に始まりました。 正しくは、父の実母の欺瞞が発端です。 実母の愛情を疑いたくないがゆえに、その欺瞞を共有した父。 その父の欺瞞を共有した、妻である私の母。
父は、表現者です。彼が自分の嘘に気づくことは、死ぬまでないでしょう。 気づいたら、きっと父は生きて行けない。 だって、父の70年を超える歳月は、その嘘に支えられて成り立ってきたのだから。
私も、(子供の頃は)表現者でした。やはり、虚構のなかで生きていました。 嘘つき、虚言症…それはまさしく私のことでした。 でも、現実世界と親しくすることを選んだ結果、書くモチベーションを失いました。 今、私は現実の手触りを愛おしみ、幸せな日々を過ごしています。 一瞬にして宇宙の果てまで我がものにできる、空想の翼は失ってしまいましたが。
どちらが幸せなのか、私にはわかりません。
でも、「ファミリーシークレット」を書いて一年…こうして今、柳さんは生きていらっしゃる。 今、どんな思いでいらっしゃるのでしょうか。 先ほど、柳さんは三島由起夫に似たところがある、と書きましたが、三島由紀夫に似ているのは、どちらかというと柳さんのお父様のほうで、柳さんは、現実との折り合いをつける時点で苦しんでいらっしゃるのかなと、ふと思いました。 作品から、血や肉や痛みを感じさせるという意味で、柳さんはより「生」に近い場所にいらっしゃると思います。 柳さんはもしかしたら、虚構と現実などという垣根を越えて、新しい表現を作っていかれる方なのかもしれない。
作家・柳美里の再生を信じて… これからのご活躍を楽しみにしています。
追伸:「魂の殺人」だいぶ前に私も読みました。ユルゲン・バルチュの章では、泣けて泣けて仕方がありませんでした。 また、動物好き(とくに、リクガメ)であったり、清志郎がお好きだったり、何かと共通点があることを知って、嬉しくなりました(^_^) これからも応援しています!
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