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カントが『永久平和論』を公刊したのは1795年であるから200年以上の歳月を経ていますが、永久平和への道は遠くその壁は厚かった。しかし戦争のない平和を求める思想は、人類の歴史と共にあり、古来幾多の宗教家、思想家、哲学者がこの問題に心を悩ましたのです。
アメリカが広島と長崎に原爆を投下してから、戦争による人類の危機が世界的に大きく叫ばれています。1961年、ノーベル平和賞の受賞者ラッセル卿は『人類に未来はあるか』という本を書いて、核兵器の発達による全人類の危機を訴えているし、歴史家トインビー博士は、核兵器の発達は戦争というものの伝統的前提条件を一掃してしまいました。
兵士と一般人、戦線と銃後、勝者と敗者というような区別は一掃され、戦争は双方の全滅あるいは大量的自殺行為であると指摘しています。1933年、英国の文豪ウェルズは『世界未来記』という本で、将来、科学と技術の画期的な進歩の結果として人類を絶滅させるような強烈な新兵器による世界大戦争が起り、これを契機に現在ある政体や思想、人生観が完全にその魅力を失い、その時にはじめて全世界の大改造が行われると書いています。
その構想は石原莞爾の永久平和理論と全くその軌を一にしていますが、石原莞雨の「世界最終戦論」の発表はウェルズより8年前の大正14年です。「世界最終戦論」で石原莞爾は、一発で何万人を殺すような兵器が発明され、無着陸で地球をグルグル廻る飛行機ができて、戦争術が高度になると戦争はできなくなり、世界は統一されて恒久平和が実現されると述べています。それは今日世論となっている世界連邦への道に相通ずるものです。
アメリカは50万の青年をベトナム戦線に送り、5年の歳月と巨額の戦費を費やしながら、ついに敗北して全軍撤退しました。我々はこのベトナム戦争から何を学んだか。それは石原莞爾が言ったように、近代科学兵器の発達した現代では、戦争はできなくなったということです。
もしアメリカ、ロシアのような大国間で本格的な戦争が始まれば、人類は自滅するでしょう。今後の戦争はトインビーの言ったように勝者もなく敗者もない大量的自殺行為で、そこに残るものは放射能の死の灰に覆われた地球上大半の焦土と不具廃疾の人間だけです。
これからの未来に課せられた人類最大の課題は、いかにしてこの地球上から戦争をなくし、世界永久平和への道を確立し、人類の危機を救い、その福祉と繁栄を増進するかということですが、こうした問題の解決には、石原莞爾の平和理論は、極めて適切な示唆と指針を与えると思うのです。
古人は「千人の諾々は一士の諤々に如かず」と言いましたが、石原莞爾は正しく一士の諤々でした。支那事変においては参謀本部第一部長として不拡大方針を主張し、杉山陸相や東條関東軍参謀長、南朝鮮総督らの政府首脳と議合わず、参謀本部の要職を追われ、日米の開戦に反対したので、稀代の才能を持ちながら東條軍閥のために昭和十六年三月、陸軍中将京都第十六師団長を最後として予備役に編入されたのです。
しかし何ものをも恐れない正義観、永久平和に対する卓越した思想は、今日なお燦然として生きているのです。石原莞爾平和思想研究会の会員としてその根源を探ることができることでしょう。米国やロシアの狂喜乱舞は、このまま続くのであろうか?
広島、長崎を思うことは人の本質を真面目に考え、無辜なる被害市民に敬意を払いつつ、米国やロシアの狂気については恒久平和のため勇気を奮い食い止めなければなりません。毎年、8月6日の広島原爆記念日や8月9日の長崎原爆記念日には犠牲になった人々の慰霊祭が開催され、8月15日の終戦記念日には戦争で亡くなった方達の追悼が行われます。
その席上やニュースで必ず聞こえるのは「私達は、あの過去の悲劇を二度と繰り返しません」という反省の言葉です。原爆の慰霊碑にも刻まれています。悲劇を繰り返さないと言いますが加害者は勝敗が既に決していたのに、原爆を投下して何十万人の命を奪ったアメリカです。なのに、なぜ、被害者である日本が原爆投下を謝り続けなければならないのか?
あの広島の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠ってください。二度と過ちは繰り返しませんから」という言葉が今も刻まれています。これは、原爆死没者に対する冒涜です。墓碑銘は、書き換えられなければなりません。「私達日本人は、世界に二度と核兵器を使わせませんから」と。
唯一の原爆被害者としてはっきりと原爆を始めとする核兵器を絶対に使わせないと、原爆死没者達に誓うべきです。また、昨年、子供たちを長崎へ連れて行った。長崎原爆資料館には、いまだ堂々と偽りの南京事件の写真が飾られており、アメリカの原爆投下がさも正当な行為だったかのような印象を与えています。
あの悲劇を繰り返さないために設けられている広島平和資料館や長崎原爆資料館に、歴史を曲げる記述が多々見られることに、私は憤りを通り越して悲しみさえ覚えます。正しい歴史を知らない限り過去の悲劇は何度でも繰り返されます。
一刻も早く歪曲された歴史を正し、その上で原爆投下という事実を見つめなおし、これからの日本が何をなすべきかを考えなければなりません。幸い、石原莞爾平和思想研究会の同志には作家や書店・出版社、流通業者などがいるので多くの資料が集まっています。
私などは保管するだけで、理解も出来ず目を通せませんが、個人所有の本だけでも莫大な資料が保管されています。今も古本屋や図書館に寄贈した本まであります。古い本は、朽ち始めてしまいます。価値のある史料として、恒久平和の礎を築くためにも多くの方と研究を重ねていきたいと思っています。
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