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「我々ほど洋上風力に突っ込んでいる日本企業はほかにいないはずです」レノバが2015年から秋田県での洋上風力の調査に乗り出していたのに対し、実はすでに海外で洋上風力の事業開発に、それも複数参画している日本企業があります。それがJERAです。
JERAは、福島事故後の国による東京電力再編で、東電と中部電力の火力・燃料部門を統合する形で設立された会社です。そもそもは、2010年代の世界的な燃料高騰を受けて、LNGにおいて世界最大のバイイングパワーを手に入れるために経産省と東電、中電の改革派らが動いたものです。
まず燃料部門が統合し、その後2019年に火力事業の統合を完了させています。しかしJERAは、日本のCO2排出量の4割を占めている火力発電の半分を担っている企業です。なぜ、そんな火力の本丸が、洋上風力へと名乗りを上げているのか。
「まずグローバルで活動していく中で、脱炭素は、すでにエネルギービジネスの『入場券』になっていることは分かっていました。だからこそ我々は、グローバルでの脱炭素のリーダーを目指さないといけない」JERAの奥田久栄副社長はこう打ち明けています。
実はJERAは、菅首相によるカーボンニュートラル宣言に先立つこと2週間ほどの2020年10月13日の時点で、火力会社ながらに「2050年までのカーボンニュートラル」をいち早く打ち出していました。
「日本だけで活動していると見えてきませんが、グローバルに活動していると、もう完全に脱炭素の競争に入っているというのを強く実感していました。だからこそ、日本の電力の3分の1を作っている我々が動かないと、日本の脱炭素が進まないという危機感がありました」と奥田副社長は話します。
そして、そのJERAの最注力分野の一つが洋上風力なのです。JERAはすでに、日本に先行して開発を進める台湾の洋上風力プロジェクト3件に参画しています。まず2018年に、オーステッドがリードするフォルモサ1 (2基、12・8万キロワット)で、オーステッドの35%に次ぐ、3・5%の出資比率を確保しました。
2019年12月から稼働させています。ほかにも2021年稼働のフォルモサ2 (4基、3・6万キロワット)、さらには2020年代後半建設開始で、世界有数規模のフォルモサ3(約200万キロワット)の最大出資者になるほどの力の入れようです。
同じ「フォルモサ」ですが、実はそれぞれ事業主体が異なり、この3つの案件を通して「洋上風力の調査開発から、建設、実際の運営まで異なる段階のノウハウを手に入れられる」(奥田副社長)のだといいます。
JERAが台湾での案件を手掛けるのは、もちろんその視線の先に日本の巨大市場が見えているからです。秋田県沖での公募では、電源開発(Jパワー)、ノルウェーのエクイノールとコンソーシアムを組み、3区域の応札に名乗りを上げています。
奥田副社長は「JERAの経営資源を考えると、洋上風力に集中投入していくべきです。同じ再エネでも、分散型の太陽光はハウスメーカーなども担っていく一方で、洋上風力のように巨大なインフラを開発するノウハウでは、まだまだ電力会社の出番があります」と話しています。
確かに、「グリーン・ジャイアント」たちは、そのいずれも従来の電力会社や石油・ガス企業が、徐々に再エネ企業へと転身してきたものでした。その意味では、欧州から10年以上遅れを取ったとはいえ、JERAは近い道のりを辿っているのかもしれません。
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