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2021年1月8日は、自動車業界にとって衝撃的な日だったといいます。米電気自動車メーカー・テスラの時価総額が8341億ドル(約2兆円)を記録し、トヨタや独フォルクスワーゲンなど世界の他の自動車メーカーの時価総額を合計した額をも抜き去りました。
テスラの株価は2020年に新型コロナウイルスが感染拡大し始めてからというものの一直線に上がり続け、7月にトヨタを抜くと、そこでも勢いを止めず、とうとう世界のすべての自動車メーカーが束になってもかなわないレベルにまで到達してしまったのです。
テスラの自動車販売台数は年間50万台であり、世界全体に占める割合は1%にも満たないです。しかし投資家は、この1社の価値が、1880年代から始まったその他の自動車産業全体よりも大きいと判断したということです。
もちろん、これは瞬間風速に過ぎませんでした。特に米国では、コロナウイルスの経済対策で巨額の資金が溢れかえっており、それが一時的なバブルを起こした側面があるのは確かでした。
だが、同時に、なぜそのマネーの受け皿がテスラになったのかと考えると、彼らが世界の「電気自動車(EV)」というイノベーションを一手に率いてきたことに理由があるのは間違いないでしょう。世界がカーボンニュートラルに向かう中で、各国の政府は一気に「EVシフト」に舵を切り始めていたのです。
IEA(国際エネルギー機関)のロードマップによると、現状世界の1%にとどまるEVのシェアが2030年には20%、2050年には96%を占めることになります。これは同時にガソリン車撤廃の動きを加速させており、ノルウェーやスウェーデンなど北欧諸国を皮切りに、英仏などの欧州主要国、米国の一部州、さらには中国までもが追随している。
これだけEVシフトが鮮明になりつつある中で、世界で最も人気のEVメーカーであるテスラが投資家の受け皿になるのは、過剰な部分はあったにせよ、自然な流れだというのも事実でしょう。それでは、EV時代の寵児となったテスラとはいかなる企業なのか。
テスラは、そのカリスマCEOであるイーロン・マスクとセットで語られることが多いのですが、実はマスクは創業者ではないのです。マスクは、1990年代に自身が起業したオンライン銀行Xドットコム(X.com) を母体に2001年に決済企業のペイパル(PayPal)を誕生させると、2002年にオンライン通販のeベイ (eBay) に売却して財を成したのです。
そこから同年に次の一大事業として宇宙開発のスペースX (SpaceX) を創業すると、その後2004年には、シリコンバレーで創業したばかりのテスラ・モーターズ(当時)に出資し、同時に会長に就任しています。もともとは日常的な業務には関与していなかったが、経営陣の対立を機に2008年にCEOとなった経緯があるのです。
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