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火力への依存を深める中で、石炭火力への再評価は進みました。LNG火力は一般的に、ミドルロードと呼ばれ、再エネ発電の周波数変動を吸収するための小回りが利く電源として認識されており、常に安定して大規模な出力のできるべースロード電源ではありません。
それまでベースロードを担ってきた原発がほぼ全停止となったことから、日本では発電コストだけで見ると安い石炭火力を重視する流れが出来上がってきたのです。2010年代は、日本中の電力会社が滑り込みのように石炭火力の計画を打ち出しました。
その理屈は、最新鋭の石炭火力発電はほぼ稼働していない老朽石油火力発電よりはCO2排出量がマシであること、もう一つはガス会社も参入できるLNG火力と比べると、石炭火力なら電力会社が競争力を保てるということも背景にありました。
当時の、資源エネルギー庁は、地方電力が進めるLNG火力計画さえも石炭火力に置き換えようという議論が真剣に行われているほどでした。このように、福島原発事故という世界エネルギー史上に残る悲惨な事故を受け、日本が火力へと一気にシフトしたことは現実的に唯一の選択肢であり、火力発電が間違いなく、その後の日本の安定供給を支えてきたことは歴然たる事実です。
ただ世界を見ると、この日本の火力シフトの時期は、まさに世界がパリ協定へと向かっているタイミングでした。そんなタイミングに、日本では自国特有の事情を重視するなかで「安定供給のためなら脱炭素は後回しでいい」もしくは「本気で脱炭素したいなら原発を動かす」というスタンスが支配的になったことも、重要な事実でしょう。
もう一つ、この時期の日本のエネルギー界の重要な転換点として指摘しておきたいのが「太陽光バブル」です。2012年7月、野田佳彦政権は「再生可能エネルギー特措法」を施行します。再エネのFIT (全量買取制度)を盛り込んだこの法律が、日本の再エネ拡大に大きなインパクトをもたらしたのは間違いのない事実でしょう。
だが、同時にエネルギー業界に少なからぬ歪みも生んだのです。このFITは、福島事故後に再エネへの関心を一気に強めたソフトバンクグループの孫正義社長が、菅政権と資源エネルギー庁の部長を巻き込む形で強力に推進したものですが、その結果、太陽光発電の買取価格が1キロワット時当たり4円(20年買い取り保証)と異様に高いものになりました。
これが「太陽光バブル」をもたらしました。特にコスト削減努力をしなくとも、参入すれば誰でも稼げる価格設定であったため、エネルギーに全く関心のない企業や、ときにはグレーな企業までも参入し、太陽光発電で稼ごうとする流れが一気に起きたのです。
しかも、そうした企業が発電する不安定な太陽光の電力を制御するのは、送配電を担う電力会社になります。このバブルが、もともと再エネに前向きではなかった電力会社がより再エネにアレルギーを感じるようになる一因となった側面は確かにあるはずです。
一方で、レノバを始め、再エネの未来を信じる企業たちがこのタイミングに台頭してきたのも事実です。だが、電力会社の再エネへのアレルギーは、(原発の再稼働を前提とした) 送電網の開放の遅れなどとなって顕在化し、世界で再エネ価格が一気に下落していくこの時期に、日本では再エネを通じたイノベーションの芽が摘まれてしまうことになるのです。
結果、日本には大手の電ア力・ガス会社が10社以上あるにもかかわらず、この時期に台頭した「グリーン・ジャイアント」のように未来に賭けた「変身」を遂げる企業は一つも出てこなかったのです。
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