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現在、自然界には4種類の力が知られています。重力、電気や磁気の力をまとめた電磁気力、原子核の中の陽子や中性子をつなぎ止めている「強い力」、そして中性子を陽子に変えると同時にニュートリノが放出されるなどの現象を引き起こす「弱い力」です。
実はこの4つの力のうち、重力だけが持つ特筆すべき性質があるのです。それは、重いものも軽いものも、重力によって生じる運動の加速度は同じであるというものです。塔の上から重い球と軽い球を同時に落とすと、どちらが先に地面にぶつかるか。
これが、ピサの斜塔で行われたという有名な逸話が残るガリレオ・ガリレイの実験です。空気抵抗などの効果を除いた理想的な実験なら、両者は同時に地面に到着するというのが正解です。物体の運動を決めるのは加速度であるから、この事実は重力によって発生する加速度が物体の重さによらないことを示しています。
このような性質を持つ力は、実は重力だけです。例えば電磁気力を考えると、同じ電圧で陽子と電子を加速すると、両者は同じ電荷(ただし符号は逆である)を持つので同じ大きさの力が加わるが、電子は陽子のおよそ2000分の1の重さのため、はるかに動きやすく、2000倍大きな加速度が生じます。
重力のこの奇妙な性質について、ニュートン力学による説明はやや回りくどいものです。物体にかかる重力は、その物体の質量(重さ)に比例して大きくなります。万有引力の法則です。一方、質量が大きいと、同じ力が加わってもその分だけ動きにくい、つまり加速度が小さくなります。
結局、この二つの効果が相殺して、物体の質量によらず同じ加速度が生じるというわけです。一応、これで説明にはなっていますが、なんだかすっとしない気分にならないだろうか?「すべての物体が同じ加速度で運動する」という、ごく単純で美しい事実を説明するのに、物体ごとに異なる力の大きさや質量を持ち込むのは美しいとは言えません。
科学者はそんなところに、より深い物事の本質が隠れていることがあるといいます。この場合もまさにその一例で、一般相対論はこの性質に注目することで、より深い重力の本質をとらえた理論が得られたものなのです。
この重力の性質のために、「加速運動する観測者の周囲の物体が逆向きに加速して見える現象」と、「重力が加わることで物体が加速される現象」は実は区別がつきません。どちらも、観測者の周囲のすべての物体が同じ加速度で運動することになります。
別の言い方をすれば、重力が働いていても、その重力による加速度で周囲の物質と一緒に落下する観測者から見れば、周囲の物体には加速度が働かない、つまり重力が消えることになります。落下するエレベーターに乗った人は、その中で無重力状態を観測することになるのです。
スペースシャトルの中で宇宙飛行士がふわふわと浮かび、無重力状態になっている映像をよく見かけます。では、「スペースシャトルの中はなぜ無重力なのか?」という質問に、どう答えるだろうか。多くの人は「スペースシャトルは地球から遠いところを飛行しているので、地球の重力が及ばないから」と答えます。しかしこれは完全な誤りです。
スペースシャトルの典型的な地表からの高度はたかだか数百キロメートルに過ぎない。名古屋の間の距離ぐらいで、地球の半径に比べれば小さなものです。つまりスペースシャトルは、宇宙から見ればほとんど地球にへばりつくように飛んでいるのです。
地球の重力の大きさは地球の中心からの距離で決まるから、地上にいる我々と、軌道上のスペースシャトルで重力の大きさは実はほとんど変わらないのです。ではなぜ、無重力となるのか? 正解は「みんな一緒に落ちているから」です。
スペースシャトルが「落ちている」というのは変に聞こえるかもしれないが、地球の重力に引かれて進路が変わっているという意味では、木から落ちるリンゴと変わらないのです。ただ、スペースシャトルは地球の表面に沿って高速で運動しています。スペースシャトルの落ち方が地球の表面の曲がり具合にぴったり合っていれば、スペースシャトルは永遠に地球の周りを回りながら、落ち続けるのです。
すべてのものが重力に身を任せて自由落下する場合、加速度は同じなので、相対的な加速度はすべて消滅して無重力状態になるのです。つまり、スペースシャトルの中の無重力状態とは、エレベーターが降り始める時に一瞬体が浮くように感じる、あの日常的な現象となんら変わりはないのです。
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