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Space X は、イーロン・マスクが2002年に創設した航空宇宙メーカーです。現在の本拠は、アメリカ・カリフォルニア州ホーソーンです。民間企業としては初めての宇宙船の打ち上げ、国際宇宙ステーションへの有人飛行などの実績を持っています。
民間企業による火星探査などを目標に掲げている。創設者のイーロン・マスクは、電気自動車ベンチャー「テスラ」のCEOも務めています。2021年4月20日現在で、マスクの保有資産額は1741億ドルで、世界第3位とされていました。
2020年5月30日(現地時間)に民間初の宇宙船有人飛行を成功させたイーロン・マスク。 コロナ禍に沈むアメリカを大興奮させました。この偉業の陰には、倒産寸前の財政破綻やNASAとの1万回にも及ぶ実証試験など、数えきれない苦労があったといいます。
成功までの道のりをマスクの評伝『イーロン・マスク 未来を創る男』(邦訳は講談社)の著者が取材しています。南ア移民の「ロケットマン」2020年5月30日、アメリカ人宇宙飛行士ボブ・ベンケン、ダグ・ハーリーの2人は「テスラ」社のEV(電気自動車)に乗り込み、フロリダのケネディ宇宙センタ―にあるロケット発射台へと向かいました。
到着後、2人は車から元気よく飛び出し、イーロン・マスクがCEOを務める宇宙スタートアップ「スペースX」の新型宇宙船「クルードラゴン」に搭乗しました。宇宙船を天上まで運ぶのは、同社製のロケット「ファルコン9」です。
座席に座った宇宙飛行士たちの前に並ぶのは、ツルツルのタッチスクリーン。冷戦時代の宇宙船のような、 やぼったいボタンやノブはありません。クルードラゴンは現地時間の午後3時22分に打ち上げられ、約1時間後に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキング。
これは民間が開発した宇宙船による初の有人飛行で、アメリカ人宇宙飛行士が国産の宇宙船で本土から飛び立つのは実に9年ぶりとなります。南アフリカ移民である「ロケットマン」のマスクが、勇敢な愛国者を宇宙へと送り届け世が世なら、この一大イベントは大興奮で迎えられただろう。
生配信を見た何百万人という子供たちがアドレナリンを放出したに違いないでしょう。ところが悲しいかな、現実はいまとんでもない状況にあります。ツイッター(現在X)で暴言を吐きまくる大統領に、宇宙軍の創設を発表する米軍。そして年初からは新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) が、世界で猛威を振るっている。
マスク自身にも「ツイッターの失言王」という側面があるため、偉業達成の瞬間を手放しで喜べないという人もいたでしょう。2020年5月17日の夜遅く、マスクは著者に電話をかけて「けっこうハードな毎日だったよ」と言った。居場所には触れず、夕食に2時間も遅れたと愚痴ったといいます。
NASAがスペースXと手を組んだのは、同社のロケットが安全性にコストの安さ、飛行管理能力に優れていると証明されたからです。この有人宇宙船の打ち上げの成功は、世界がいま猛烈に必要としている無上の喜びが共有される瞬間でもあったのです。
少なくとも政府機関であるNASAが安全基準を維持しつつ、民間企業と提携するという大胆な冒険ができるということは確認できたはずです。マスクによれば、打ち上げまでに「会議も実証試験も、1万回くらいはやったんじゃないかな」とのことです。
過去10年でスペースXは約100基の無人ロケットを打ち上げ、その多くを無事に地上に再着陸させています。同社は民間宇宙企業のトップに上り詰め、その企業価値は400億ドル(約4兆4000億円)に迫る勢いなのです。
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