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中国外交の押しの強さがめだちます。「戦狼」と呼ばれる、けんか腰の中国大使たちについては、どうお考えですか。
マブバニ ケ小平の頃の中国外交はいまよりも謙虚でしたが、微力でした。当時の中国経済は、購買力平価で見てもアメリカの10分の1でしたからね。いま中国のGDPは、購買力平価で見ればアメリカを上回っています。だから中国は堂々と外交を展開しているのです。
中国の外交官の一部に不心得者がいて、その人たちが「戦狼外交」をして、フランスなどの国で煙たがられています。ただ、駐米中国大使の崔天凱(インタビュー当時)などのように、説得力をもって状況を落ち着かせようとしている外交官もいるのです。中国の外交官が全員、戦狼になったわけではありません。
中国はインド、台湾、日本、南シナ海などで国境線を変更しようとしていると批判されています。中国の膨張主義はアジアの平和に対する脅威ではありませんか。
マブバニ 中国は膨張主義ではありません。膨張主義の国家は、軍隊を使って領土を征服して拡張していきます。中国はこの4年間で一度も戦争をしていない唯一の大国で、最後の戦争は1979年の中越戦争です。
1980年代後半にベトナムとの小衝突がありましたが、その後、中国の軍が発砲したこともありません。2020年6月にインドとの衝突で死者が出ましたが、そのときも銃器は使われていませんでした。
中国は世界のどこに対しても領土征服の意欲を抱いていないのです。中国は強くなるにつれて堂々と要求するようになっており、それが一部の国々を不安にさせています。しかし、世界はあらゆる手段を使って中国が平和的な国家でありつづけるようにしなければなりません。中国を武力で領土拡大を狙う国家にしてはなりません。
ナポレオンの有名な言葉のとおりです。「中国という眠れる獅子を起こすな。目覚めれば世界全体が揺れる」西側諸国の政策の多くは軽率であり、中国を眠らせずに、目覚めさせているところがあります。
中国には台湾への武力行使を主張する人もいます。どうして中国の指導者たちは、ナショナリズムを抑えようとしないのでしょうか。ナショナリズムは、中国の発展を損ないかねません。
マブバニ 台湾の問題を理解するには、1842年のイギリスへの香港割譲から1949年の中華人民共和国建国まで、中国が耐え忍んだ「百年国恥」に遡らなければなりません。台湾は1895年に日本に割譲されています。
中国側にしてみれば、台湾はつねに中国の一部だったのです。またアメリカは1971年に中華人民共和国との国交を回復しはじめてから中国と台湾は一つの国だと認めています。いわゆる「一つの中国」政策ですね。
問題は、この二つの制度がいつ再統一されるか。世界中のすべての人が平和的な再統一を望んでいます。そのためには台湾を独立国にしようとするあらゆる試みを排さなければなりません。
台湾が独立国になろうとすれば、中国軍は介入せざるをえないでしょう。習近平などの中国の指導者が、台湾の独立の問題で弱腰になれば、その政権は中国の人民によって転覆されてしまうからです。
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