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火の使用は、動物のなかでヒトだけの特徴とされています。(植物は、競合者に勝利するために野火を利用する生存戦略を進化させていますが、自分で火を起こしたり消したりはできない) 人間の意識や文化には火が中心的な役割を果たしていますが、それが信仰や儀式の形に昇華して世界最古の宗教の一つが生まれました。
今からおよそ4000年前、古代ヘブライの預言者アブラハムと同じ時代に、ペルシャ(現在のイラン)にもう1人預言者がいました。アブラハムもそうですが正確な生年は謎で、様々な情報をもとに推定するしかありません。預言者の名はゾロアスター。
彼が信奉していたのは火でした。ゾロアスター教の寺院は火で清められ、永遠の炎を燃やし続けることが信徒の数少ない務めの一つです。火は神の清らかさと啓発された精神の光を象徴していました。ゾロアスター教の神アフラ・マズダは、生贄も金銭も要求しない。
聖なる火をあかあかとともし、良いことを考え、良い言葉を話し、良い行ないをすること。人間に求めるのはそれだけです。だが、こんな簡単なことも人は守れない。悪いことを考え、悪い言葉を口走り、ときには恥ずべき犯罪を行なってしまう。いったいどうして?
この問いに対する決定的な答えはまだありませんが、世界最古の宗教の一つゾロアスター教も、それを見つけようと試みています。人間が犯す罪だけでなく、自然災害や伝染病など、この世に起こるすべての悪いことは、アフラ・マズダの対極の存在である邪悪なアンラ・マンユの悪影響がもたらすとされています。
人間がアンラ・マンユを打倒するのを見守り、助けてくれるのがアフラ・マズダです。宇宙の未来全体が善悪どちらに向かうのか、人間の行ない一つで決まるのです。紀元前6世紀、世界で唯一の超大国だったのが古代ペルシャ帝国です。ペルシャの歴代皇帝が建設した巨大な都ペルセポリスに、アンラ・マンユを生き生きと描いた浅浮彫りが残っています。
短くて太い角、先のとがった尻尾、ひづめのある足。我々が悪魔と聞いて描くイメージは、遠くアンラ・マンユに由来しています。ゾロアスター教はギリシャからインドまでの地域で、1000年にわたって広く信仰されていたから、その後、登場した宗教に影響を与えても不思議ではないでしょう。アフラ・マズダという神は猫派ではなく犬派でした。
うっかり犬を1匹殺したら、罪を償うのに猫を1万匹殺さなくてはならない。対してアンラ・マンユは猫派でした。 悪魔の手下である魔女と一緒に猫が出てくるのは、その名残だろうか。狂犬病ウイルスは、科学がまだなかった世界では、悪いことが起きるとアンラ・マンユの仕業と考えるしかなかったのです。
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