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「ナトリウム」でもウランを燃料にすることは従来の原発と同じなのですが、その濃縮度が5〜20%と従来の5%より高いものを用いる予定です。ウランは濃度が低いほど使用後の放射性廃棄物の量も増えることが知られており、テラパワーは高濃度化によりウランの使用量を減らすことで、出るゴミの量も少なくする狙いです。
そして、3つ目の特徴が冷却方法です。従来の原発では原子炉の冷却に水を用いていましたが、ここにナトリウムを使うのが、その名前の所以になっています。例えば、2011年の福島第一原発の事故では水素爆発によって周辺に汚染物質がまき散らされていました。
その直接の原因は、原子炉建屋の中に水素が充満し、圧力鍋のような状態になったことでした。テラパワーはここに、水素も作らず、沸点の高いナトリウムを使うことで、水素爆発を起こす危険性の低減を狙っています。
最後が「簡素化」です。ゲイツは原発の設計の古さや複雑さを問題視していて、これがヒューマンエラーを起こす原因だとみています。このため、テラパワーでは原子炉とそれ以外の設備をできる限り分離して、別々の建物に収容します。
こうすることで一つひとつの設備を簡素化し、使用するコンクリートの量をも従来の原発よりも80%減少させるとしています。「ナトリウム」は約7年の建設期間を経て、最終的には2030年代の運転開始を目指すといいます。
ワイオミング州の知事は「これは我々がカーボンネガティブを目指すための最短ルートです。原発が我々のエネルギーに関するあらゆる戦略の一部であることは明らかです」と話しています。
世界がカーボンニュートラルに向かう中で、原発をめぐる評価は今揺れ動いています。かつて原発に使われた「ダーティー」という言葉は、今や大量のCO2を発生させる石炭火力を表す言葉となり、CO2を排出しない原発に「クリーン」という言葉が用いられるようにさえなりました。
欧州では、再エネと原発の組み合わせでネットゼロを達成する国も多く、福島事故後の脱原発政策でしばらく石炭火力への依存度を高めたドイツを批判する声まで出ているのは先述の通りです。
その是非はさておき、原発が一つの論点に躍り出たことは間違いありません。だが、2000年代の原子力ルネッサンスと異なるのは、福島事故の教訓から、ゲイツのように「新型原発」を開発する動きが広がっていることでしょう。
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