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EVを手掛けるのはテスラだけではありません。EV自体は1990年代から登場しているし、テスラのロードスターから2年後の2010年には日産が大衆向けEV「リーフ」を300万円台で投入しています。しかし、テスラの躍進も含め、EVがようやく普及モードの一歩目を歩み始めたのは2015年ごろのことでした。
一つのきっかけとなったのは、やはりパリ協定です。世界の温室効果ガスの排出量のうち、自動車など交通部門が占める割合は、調査によって異なるものの、大体約2割に上る。特に米国では2%を占め、エネルギーを超える一大排出部門となっているのです。
この交通部門には、自動車だけではなく航空機から船舶までが含まれますが、航空機も船舶も巨大かつ航続距離も長いため、いきなり電動化を進めるのはかなりの困難を伴います。その点、自動車では、まだ主流にはなっていなかったとはいえ、すでに複数のEVが市場に投入されていたこともあり、ここでEVシフトの礎が築かれつつあったのです。
実際、パリ協定の直前には「電気自動車と気候変動に関するパリ宣言」が採択され、2030年までに地上交通機関の少なくとも20%を電気自動車にすることなどが謳われました。もう一つ、このEVシフトへの引き金となったのが、「ディーゼルゲート」と呼ばれる事件です。
これはパリ協定締結に先立つ2015年9月に発覚した不正であり、特に欧州の自動車業界を根底から揺さぶることになりました。具体的には、自動車大手の独フォルクスワーゲンが「環境に優しいディーゼル」として売り出していた車が、環境規制をくぐり抜けることを目的に不正ソフトを組み込みこんでいたのです。
検査時だけ大気汚染物質のNOx(窒素酸化物)の排出を減らす装置を働かせていたことがわかったのです。ディーゼル車が道路を走っている間はこの装置は作動しないため、実際は、検査時よりも最大で4倍も多くのNOxを撒き散らしていたことが分かったのです。
何より、フォルクスワーゲンといえば当時年間販売台数1000万台近くを誇り、トヨタに次ぐ世界2位のメーカーだっただけに衝撃は大きかった。さらには、高級車ベンツで知られるドイツの自動車大手ダイムラー(現メルセデス・ベンツ)でも同様の不正が2017年5月に発覚しました。
一般的に信じられていた「ディーゼル車は環境に優しい」というイメージが大きく崩れることになったのです。これらの事件が自動車大国のドイツ、さらには欧州全体がEVへと傾倒していくきっかけとなるのです。
その一つの象徴となったのがフォルクスワーゲンの不正から1年後の2016年、ダイムラーの会長ディーター・ツェッチェが打ち出した「CASE」と呼ばれる中長期戦略でした。これは、次世代の自動車の競争力を左右する4つの技術の頭文字をとったものです。
Connected: インターネットへの接続を通した安全やエンタメの強化。 Autonomous:ソフトウェアが自律的に運転する「自動運転」。 Shared & Services: カーシェアリングなど、所有から「シェア」への移行。 Electric: 「電気自動車」を始めとする電動化。
ツェッチェは、CASE戦略のお披露目の場となったパリのモーターショーでCASEは、メルセデス・ベンツの未来を形作るものです。これらを体系的に進化させ、インテリジェントに組み合わせていきます。
現在すでに、ベンツは4つの分野で主導的な役割を果たしていますが、これらを一つの包括的な戦略にまとめることで、未来のモビリティにおいて支配的な役割を果たすという主張を明確にしていますと力強く宣言しました 。これ以降、日本を含む自動車業界ではCASEが合言葉として定着し始め、「100年に一度の変革」などと評されているのです。
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