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 新型コロナウイルスによるパンデミックは、女性がその多くを担う無休労働や、女性が主な働き手の産業の過小評価された仕事に、経済がいかに大きく依存しているかを明らかにしました。こうした仕事の地位を向上させ、それをより広範な経済成長政策に取り込むために、政府は何ができるのであろうか。
  コロナによって我々は、経済において何が「価値のあるものか」ということをより深く考えるようになりました。「価値のあるもの」とは、値段がつけられるもの、交換できるもの、とされます。ところが、これまで「高い価値がある」とされてきた分野。例えば、金融業や不動産業などの分野は、社会の基盤を支えるものではなかった事が明らかになりました。
  コロナの感染拡大を受けて、行政は「エッセンシャル・ワーク」とは何かを定義づけ、こう言われるようになりました。最も価値のある、かけがえのない市民とは、医療、公的介護、教育、公共交通、スーパー、配送サービスの現場で働く人たちだ、と。
  こうした仕事はヨーロッパ、イギリス、アメリカでは、女性や有色人種が多く担っています。こうした人びとが他の人びとよりつらい思いをするのは「仕方がないこと」ではありません。何事もそうであるように、政策次第なのです。
  家庭内の無給労働を国内総生産(GDP)にカウントできると考えるのは野心的な試みではないでしょう。どうすれば実現しますか。まず、何でもかんでもGDPに含めるために適応させたり調整したりすべきではありません。
  一つの指標として、GDPには本質的な欠陥があります。というのもGDPにおける経済的な価値は、市場取引にのみ基づいて決定されるからです。つまり、市場で売られる商品やサービスだけがカウントされます。GDPは、「価値の抽出」を「価値の創造」に変えようとすると同時に、収入や富の極端な格差を正当化するために使われます。
  GDPよりはるかにダイナミックな評価要素や指標があります。たとえばイギリスでは、公共部門のプロジェクトは、まだ生まれていない世代への影響を考慮して助言をおとなう「未来世代コミッショナー」によって審査され、評価されます。
  ニュージーランド政府は2019年、世界初の「幸福予算」を国家予算に組み込みました。また「真の進歩指標 (GPI)」は、環境・社会的コストと利益を分け、家事やボランティアの価値を認め、格差是正をめざすものです。
  こうした評価アプローチがより活用され、受け入れられるようになれば、家事のような労働が社会に与える直接的、間接的な影響をより正確に示すことができるようになるでしょう。コロナの感染拡大によって社会は、保育園などの施設や子どもを預かる親類や知人など、育児に携わる存在の重要性をより強く意識するようになりました。
  家事の主な担い手とされる女性は、コロナによって男性よりはるかに高い割合で労働市場からの脱落を余儀なくされています。家事、掃除、家族のケア、子どもの世話をすることは、社会に大きな波及効果をもたらします。けれども、それをきちんと把握して、こうした活動を明確に示し、評価する努力はまだ充分になされていないのです。
  
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