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我々が生きている間に、世界中の人が自由に海外旅行へ行けなくなる日が来るとは思ってもいませんでした。東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていた2020年夏、世界中のアスリートや外国人観光客が東京に集結することに疑問を差しはさむ余地はなかったのです。
だが、新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延し、毎年、海外に出かけるのが楽しみだったのですが、海外旅行に出かけることが事実上不可能になってしまいました。緊急事態宣言の発出にともない、国内旅行でさえも出かけるのが難しくなり、パスポートの期限は切れてしまい、観光業界、航空・鉄道業界は過去に類を見ないほど厳しい状況に陥った。
振り返ると日本人の多くが新型コロナウイルスによる影響を直接的に感じ始めたのは2020年1月下旬のことでした。1月22日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で中国人観光客が春節(旧正月)で訪れる日本の人気スポットについて解説していました。
このコーナーの最後に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症の感染者が増えているというニュースを短い時間で紹介していました。その頃はまだ軽く触れられる程度の扱いでしたので、観光バスで横浜に出かけて中華街で宴会を行い、劇団四季を鑑賞して、夜は目黒の雅叙園でも懇親会を開催しました。
だが、その数日後には中国国内での感染が爆発的に拡大し、春節の後半には中国政府が中国人の海外への団体旅行を禁止するとともに春節の期間を延ばすことを発表しました。一月下旬の段階では、日本国内のドラッグストアにはマスクの在庫が十分ありましたが、日本を旅行中の中国人が大量に買っていく光景が見られました。
その後の熾烈なマスク争奪戦を予想していた人はわずかだったでしょう。2月に入ってから国際線の減便が始まり、3月からは国内線の減便も始まりました。2001年のニューヨーク同時多発テロ、2011年の東日本大震災などで一時的に利用者が大幅に減少したことはありました。
しかし、全世界で一年以上にわたる長い期間、人が自由に移動できなくなったことは、戦後に民間航空路が発達してから初めてのことではないでしょうか。羽田空港や成田空港のターミナルに乗客の姿が見あたらない、まるで時間が止まったかのような光景が見られた。
この数年、当たり前のように空港、そして都会、そして地方都市で大きなスーツケースを引く外国人観光客もほとんど見られなくなり、秋の京都の紅葉シーズンも日本人しかいませんでした。ホテルも観光地も閑古鳥が鳴いていました。
これまでも災害や疫病、政治リスクや経済リスクなどで飛行機の利用者が大幅減少したことはありましたが、全世界の人の動きが止まってしまったことはありませんでした。海外旅行が好きだった私にとって、これだけ国境という存在が大きいと感じたことはありませんでした。
台湾や上海、香港などへは週末の一泊でも国内旅行感覚でLCCを使って気軽に出かけることができ、日帰り海外旅行も不可能ではなかったのですが、日本国民のほとんどが一年以上海外へ渡航できない状況が続き、国内旅行も自粛する人が増え、航空会社はもちろん、旅行会社、宿泊施設 、観光施設、飲食業も含めて甚大な影響が出たのです。
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