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最も古くから人類が宇宙を眺めてきたのは電磁波、それも我々の眼球が感じることができる可視光線によってです。人類の発生以来、数え切れないほどの眼が宇宙に向けられてきたことでしょう。
それまでひたすら裸眼で宇宙を見ていた状態から脱却し、ガリレオが望遠鏡を初めて天体に向けたのが1609年、オランダのハンス・リッペルスハイが望遠鏡を発明したわずか1年後のことでした。人類の長い歴史の中で見ればごく最近のことです。
望遠鏡とはすなわち遠くを見る道具ということですが、その機能は主に二つあります。像を拡大する、つまり細かいところまで見られるようにすることが一つであり、これは光の到来方向を分解する能力なので角分解能という。この点、双眼鏡や顕微鏡と変わりはない。
もう一つが、暗くて肉眼ではとても見えないような微弱な光のシグナルを検出する能力であり、感度と呼ばれています。角分解能は肉眼で言えば、視力に対応するものです。日常生活で言う視力1.0とは5メートル離れた距離から1.5ミリメートルの模様を見分ける能力で、角度で言えば1分角=60分の1度です。
望遠鏡の角分解能は光の波長を望遠鏡の口径で割った数字で決まり、口径を大きくすれば角分解能が上がります。原理的には口径10センチメートルの望遠鏡で角分解能は1秒角つまり3600分の1度に達しますが、地球上にある望遠鏡ではこれ以上口径を大きくしても角分解能は上がらなくなるといいます。
地球の大気のために天体の像がぼやけてしまうためです。一方、感度の方は大きな望遠鏡で大量の光を集めれば集めるほど暗い天体まで検出できるようになります。このため、最先端の天体望遠鏡の開発は大型化の歴史でもありました。
望遠鏡の口径が1メートルの壁を突破したのが1800年頃です。20世紀前半、ハッブルらが我々の銀河系とは別の銀河を見つけ始めた頃、観測に用いていた当時最先端のウィルソン山天文台フッカー望遠鏡の口径は2.5メートルでありました。
20世紀終盤から21世紀初頭にかけて8〜10メートル級の巨大望遠鏡が登場し、それが現在の可視・赤外波長域での望遠鏡の最先端となっています。1993年にハワイ島マウナケア山頂に建設されたケック望遠鏡や、2009年にカナリア諸島に建設されたカナリア大望遠鏡は口径10メートルを超えますが、それは小さな鏡を並べた分割鏡です。
一枚鏡でできた単一鏡としては、1999年に完成したすばる望遠鏡の8.2メートルが現在でも世界最大級です。もちろん、口径2.4メートルの望遠鏡を初めて大気圏外に設置したハッブル宇宙望遠鏡も忘れてはならないでしょう。
素粒子加速器に関して先に述べたムーアの法則やリビングストンチャートと同じことを望遠鏡の進化史に当てはめると、17世紀初頭の発明時に10センチメートル程度だった口径が、180年ごとに2倍のペースで巨大化してきたことになります。
2030年頃には世界は30メートル級望遠鏡の時代を迎えると予想されていますが、これはこの法則の予想を上回る驚くべきスピードと言えます。望遠鏡の大きさだけでなく、データの記録方法の進化もまた見逃すことはできないでしょう。
人類として初めて望遠鏡で宇宙を眺めたガリレオが、それを記録した手段は自らのスケッチでした。やがて写真技術が発明されると、写真乾板が天体観測データの保存に用いられるようになりました。
写真技術自体はすでに幕末の日本にまで伝わっていたことは周知の通りでありますが、写真乾板が初めて天体観測に用いられたのはそれより遅く、1891年のマックス・ヴォルフによる小惑星の発見だったといいます。そして1980年代になると、圧倒的に感度が良い新技術である、デジカメなどにとって代わっていくのです。
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