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一般相対論は本来、重力の理論として誕生したもので、宇宙の誕生や歴史を明らかにしようという宇宙論の目的で作られたものではないといいます。だがそれは、従来の絶対的な時間や空間といった概念の破壊的革命でもありました。時空のゆがみという、時間空間の構造につながる性質が、物質の存在によって決定されてしまう。
宇宙というものを、時空とその中に存在する物質と定義するのであれば、これはすなわち宇宙の進化そのものを決定する理論ということになります。したがって1915年に一般相対論が完成してから、これが宇宙論に応用されるまでにさほど時間はかからなかったとしても、驚くには値しないといいます。
1922年と1924年の2本の論文で、旧ソ連の物理学者アレクサンドル・フリードマンが一般相対論に基づいて宇宙のモデルを考察し、現在のビッグバン宇宙論でも標準的に用いられる膨張宇宙の方程式とその解を導いています。
ただし、なんの仮定もなくアインシュタイン方程式から宇宙の構造が決まったり、膨張する宇宙の解が出てくるわけではありません。フリードマンのモデルには大きな前提がありました。
それは、宇宙は「一様等方」、すなわち宇宙のどの場所でも密度などの物理的性質は同じ(一様)であり、またどの方向を見ても宇宙は同じように広がっている(等方)というものであると言っています。
宇宙には特別に重要な地点はなく、どの場所もみな民主的で平等である、と言いかえてもよいというのです。ここに「宇宙の果て」との関連が出てきます。この一様等方宇宙の場合、宇宙は無限に広がっていることになると想像されるかもしれません。
もちろん、その可能性もあります。特に、空間にゆがみがない場合は無限に広がることになります。一方で、一様等方ではあるが有限の体積に収まる宇宙モデルもまた可能であります。これもやはり次元を一つ下げて、2次元の球面の例えを用いるのがよいでしょう。
球の表面という2次元世界における1点は、どこも同じ性質を持ち、一様等方な世界でありますが、その面積は有限です。空間が曲がっていればこのようなものも実現可能になるのです。宇宙空間は3次元ですが、次元を一つ増やして、4次元空間の中にある球面というものを数学的に考えることができます。
それは3次元空間であり、これに時間を加えて4次元時空とすれば、有限の体積を持つ一様等方宇宙モデルの出来上がりです。宇宙が一様等方であるというのは確かにシンプルな仮定ではありますが、理論的な考察だけでこれを正当化することはできません。フリードマンの当時はあくまで仮定でありました。
しかし現在では、この仮定は極めて高い精度で成り立っていることが観測的に証明されています。我々の太陽が含まれる銀河系は、およそ1000億もの星が重力で集まった、差し渡し約10万光年の天体です。宇宙にはこのような銀河がいたるところにあり、だいたい一辺1000万光年の立方体の中に銀河が一つ存在しているのです。
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