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いつの時代もティーンエイジャーは寝不足だったとはいえ、この10年で不眠の問題は悪化しています。1〜24歳で睡眠障害の診断を受けた若者の数は理解しがたいことに2007年から5倍にも増えています。不眠は確かに2007年以前から増加傾向でしたが、少しずつだったし、人数も少なかったのです。
2007年これが睡眠障害で受診した人の数がぐっと増えた年で、2011年にはオーバーヒートしました。精神状態が悪くなって受診した人が増えたのと同じパターンです。2011年に何が起きたのかは、もうおわかりでしょう。
インターネットにつながるスマホが本格的に普及し、金持ちの贅沢品から、子供や若者を含め皆のポケットに入った頃です。若者の睡眠時間の減少は、大人よりも速いスピードで進んでいます。20ヵ国70万人の子供を対象に睡眠の傾向を調べたところ、たった10年前に比べても睡眠時間が短くなっていることがわかりました。
皮肉なことに、同時期に、若者にとって睡眠がどれほど大事かという研究報告があふれ出したのですが。どのくらい短くなったのかというと、丸々1時間です。毎日3000回近くスマホをスワイプし、そのせいで夜になっても興奮が収まらない、そんなティーンエイジャーのストレスフルな生活が眠れなくなる原因だというのは、憶測ではないでしょう。
よく眠れない原因は本当にスマホなのだろうか。ノルウェーで、1万人のティーンエイジャーにどのくらいの睡眠時間が必要だと思うか、そして実際に何時間眠っているかを調査しました。さらにタブレット端末やスマホ、パソコンをどのくらい使うのか、テレビをどれくらい観るかについても答えてもらっています。
その結果は大人とまったく同じ傾向でした。スクリーンの前にいる時間が長いほど不眠になります。やはり、スマホが若者の睡眠不足の大きな原因だというのは間違いなさそうです。英国では1〜18歳の半数が夜中にもスマホをチェックしていると答えました。10人に1人は最低でも10回確認しています。彼らに罪悪感がないわけではありません。
7割近くが「学校の勉強に影響が出ているかもしれない」と答えているのです。睡眠の悩みは特に女子に顕著で、考えられる説明としては、SNSに費やす時間が女子の方が多く、男子はゲームをしている時間が長いからでしょう。
置いてきぼりにならないように、女の子たちはいつもオンラインでコミュニケーションが取れる状態でなければいけないと思っています。ひっきりなしにドーパミンが放出され、さらには、常にそこにいなければいけないことや他人と比べてしまうストレスとも相まって、余計に眠れなくなるのです。
自分が今の時代のティーンエイジャーでなくてよかった。そんな自分勝手な考えが頭をよぎります。10〜17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者の割合はここ10年で倍になった、という統計を読みました。もっとも増加したのは強い不安と鬱で、いちばんの被害者は若い女性です。
ストックホルムでは、13〜24歳の女性の10人に1人以上が公営の精神科にかかっています。なお、個人開業の精神科医はここに含まれていません。何もスウェーデンだけが特別なのではなく、若者の精神的な不調は世界中で爆発的に広がっているのです。米国でも、うつの診断を受けたティーンエイジャーは7年で6割増えています。
米国では90年代からティーンエイジャーのライフスタイルを追跡し、毎年、大規模なグループに「昼間は何をしているか」を尋ねています。 友達に会うのか、デートをするのか、酒を飲むのか。またはスマホやパソコンを触っているのか、勉強しているのか、運動しているのかなど、ティーンエイジャーがやりそうなことすべてです。
そのときの気分を尋ねる質問もありました。寂しいのか、不安なのか。睡眠についても設問があります。このような調査は分析が難しいとはいえ、ここ数年、ある傾向が具体的になっています。スマホやパソコンの前で過ごす時間が長いほど、気分が落ち込むのです。
パソコン、スマホ、タブレット端末を週に10時間以上使うティーンエイジャーがもっとも「幸せではない」と感じています。その次が6〜9時間使用する若者です。つまり、4〜5時間以下の若者よりも「幸せではない」と思う率が高いのです。
そんな調子で続きます。 スクリーンタイムと聞いて思い浮かぶすべてSNS、ネットサーフィン、ユーチューブの動画にゲームが精神的な不調に繋がっていました。一方、それ以外のことをする場合、つまり誰かと会ったりスポーツをしたり、楽器を演奏したりすると精神的に元気になる傾向がありました。この傾向は複数の調査で見られました。
16件の研究で合計1万5000人の子供・若者を調査した結果をまとめると、1日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高めています。時間が長くなればなるほど、リスクは高まります。4万人の子供・若者を調べると、1日7時間以上使用する人はスクリーンタイムの短い人と比べると、うつと不安の症状が倍も多く見られる事が解ったのです。
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