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血糖値が下がらないということは、血液中のブドウ糖がうまく細胞の中に入っていかないということです。糖尿病で高血糖状態が続いている人は、血液中にはブドウ糖がたくさん溢れているにもかかわらず、肝心の細胞に入っていかないわけです。
そのため、エネルギー源として使われないまま、尿に流れ出てしまいます。ごく簡単に言えば、10キロのエネルギー源を投入しても1キロ分ほどしか使えず、残りの9キロ分はそのまま垂れ流しているようなものです。
しかし、口から摂り入れたものが血糖という形になるまでには、かなりのエネルギーを要します。まず、デンプン(多糖類)やショ糖(二糖類)といった形で摂り入れたものを様々な酵素を駆使して、単糖であるブドウ糖に分解するまでに、それなりにエネルギーを使います。
それを小腸で吸収し、血管へ運び、全身をくまなく巡らせるのにもエネルギーを要します。しかも、血糖値が高くなれば、膵臓の細胞を総動員してインスリンを出させるわけです。それだけ膨大なエネルギーを使ったにもかかわらず、ほとんどのブドウ糖は尿に流れ出てしまっては、非効率極まりありません。
そうすると、今度は肝臓が大事なエネルギー源を外に捨てられたらまずいとばかりにフル回転し、グリコーゲンという形で蓄積しようとします。そうして肝臓にも負担をかけてしまう。そんな中でお酒を飲めば、肝臓はさらに疲弊します。
エネルギーは使っているのに、肝心のエネルギー源が入ってこない。糖尿病は、摂取した糖をエネルギー源として使えなくなる病気でもあります。だから、糖尿病の人は疲れやすいのです。糖尿病の初期には、はっきりとした自覚症状はありません。
サイレントな病気です。知らないうちに発症・進行して気づいたときにはかなり重症化しているという意味でサイレントキラーと言われることもあります。ただし、高血糖状態が続くと、「疲れやすい」「トイレの回数が増える」「喉が渇く」といった症状が現れてきます。
疲れやすくなるのは、先ほども述べたように、糖の代謝が正常に行われなくなり大事なエネルギー源であるブドウ糖が尿に流れ出てしまうため、ブドウ糖を正常に使えなくなるからです。トイレに行く回数が増えるのは、血液中に余ったブドウ糖を尿とともに体の外に流し出すためです。回数は増えなくても1回の量が増えることもあります。
そして、尿が増えるので脱水状態になり、喉が渇きやすくなります。疲れやすい、トイレの回数が増える、喉が渇くという、一見つながりのなさそうな症状は、いずれもおおもとをたどれば、ブドウ糖を正常に使えなくなっていることに起因しているのです。
ブドウ糖を使えなくなる(細胞内に取り込めなくなる)ということに関連して、もう一つ付け加えると、糖尿病が重症化すると痩せていきます。糖尿病になりやすい体質と、暴飲暴食や肥満、運動不足といった後天的な要因が組み合わさって発症するのが2型糖尿病ですが、太っている間は、あまり症状は表には出てきません。
逆に、食生活は変わっていないのに痩せてきたら、糖尿病がかなり重症化していることを意味します。なぜなら、痩せるということは、食事で糖質を摂っても、血液中のブドウ糖を細胞に取り込めず、そのまま腎臓から尿として排出しているということだからです。
その段階になるとインスリンもほとんど出なくなっていると考えられます。血糖をエネルギー源として使えないため、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーに変えようとします。だから、痩せていくのです。これは、日本人の糖尿病の特徴だといいます。
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