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インターネット上では、人を「自分たち」か「あいつら」かに分類しようとする強い衝動が、人間に内蔵された災害や危険への恐怖と同じように明らかな効果を発揮します。今は新聞やテレビよりもフェイスブックでニュースを読んでいる人の方が多いのですが、そこには決定的な違いがあるのです。
新聞やテレビのニュース編集局は、どのニュースを報じるかを選択し、それが面白いかどうかだけでなく、真実かどうかも精査しています。さらに政治家の顔色迄うかがい真実を覆い隠すこともあります。一方、フェイスブックのタイムラインに流れてくるニュースは、コンピューターのアルゴリズムが選んだものです。
つまり、拡散される記事に書かれていることが真実かどうか、そこに責任を持つ編集局はフェイスブックには存在しない。私たちが「興味を持つだろう」とアルゴリズムが思ったニュース、つまり友人たちが読み、拡散したニュースが目に入ることになるのです。
内容が正確かどうかはまったく関係ないし、真実を隠してしまったニュースなどは目に入ることがないのです。人間の歴史のほぼ全期間、人口の1〜2割が他の人間に殺されてきた結果、私たちは紛争や脅威のニュースに格段の関心を持つようになりました。
それが生死にかかわる情報だからです。フェイスブックのアルゴリズムはニュースの選定は、私たちが読んで拡散するかどうかだけで決まります。ということは、紛争や脅威に関連したニュースがとりわけ速いスピードで拡散される可能性があるのです。
コロナワクチンの接種などは意図的に流していましたが、コロナワクチンを摂取してお亡くなりになっている方の驚くべき人数は覆い隠していました。極端に明るいニュースについても同じです。それが真っ赤な嘘で固められた内容だとしても。
まさしくそうなのです。SNS上で拡散された10万件以上のニュースを調査したところ、フェイクニュースのほうが多く拡散されていただけでなく、拡散速度も速いことがわかりました。一方でテレビや新聞のニュースは、拡散されるまで6倍の時間がかかっていました。真実に忠実である情報が高年齢者に届くのは時が経ってからなのです。
読まれるからアルゴリズムに優先され、タイムラインのいちばん上に出てくる。しかも政府や官僚もテレビ・新聞も関与してコロナワクチン接種を拡散するのですから、アルゴリズムのせいだけではない。アルゴリズムがまずそのニュースを私たちにしっかり届け、その後は私たち自身が友人にそれを転送しているのです。
それに、読む人が多ければ多いほど洗脳されてしまうのです。人類史上最大のニュース発信源フェイスブックは、拡散される内容の信憑性に編集責任を取っていないという批判を受けています。人間に備わった恐怖や争いへの興味を食い物にして、私たちの注目を引きつけているかもしれません。すべては広告を売るためです。
こんな指摘をする人もいます。SNS上のニュースは軍事紛争を煽っているし、民主主義を揺るがしている。いやそれどころか、すでに決定的な影響を与えてしまってもいると。そろそろデジタル・デトックスをしなければいけないのではないだろうか。
SNSがストレスを与え、嫉妬させ、ニュースを拡散しているわけだから、「フェイスブックする」 時間を減らすのはいい考えでしょう。米国で150人近くの大学生に精神状態についての質問に答えてもらったところ、予想通り結果が二分しました。
元気な人と軽いうつ状態の人です。学生たちは無作為に2つのグループに分けられ、片方のグルー ブはSNSを普段通り使い続けました。もう片方はフェイスブック、インスタグラム、スナップチャットを1日最大30分、1サービスにつき10分までと制限しました。
3週間後、利用を30分に減らしたグループは精神状態が改善していました。調査開始時にうつ症状のあった人たちは、以前ほど気分の落ち込みや孤独を感じなくなっていました。つまり、SNSが私たちをうつにする可能性があるのです。
鬱の人がSNSをよく使う、というわけではなくて。またこの研究のポイントは、被験者たちがSNSを完全にオフにしたわけではなく、時間を制限しただけで調子が良くなったことです。悪影響を受けないようにするには時間をどのくらい制限すればいいのか、それは正確にはわからない。研究者が無作為に30分と指定しただけですから。
減らすだけでなく、一時的に止めたり、完全に止められるなら、もっとよい効果を得られるだろうと思います。デンマークの実験では、1000人近くが丸1週間それを試してみています。その結果、人生に満足を感じ、ストレスが減り、自分の周りの人たちと「顔を合わせる」時間が増えたという。
この実験は、SNSから受ける影響は人によって違うということも示しました。フェイスブックで嫉妬を感じていた人たちへの影響がとりわけ顕著だった。とはいえ、コメントもせず他人の投稿を読んでいただけの消極的なユーザーにも効果は現れているのです。
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