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宇宙を「時空」すべてを包括する普遍的な一種の格子で、そのうち三つの次元が空間にあたり、残る一つの次元が時間に対応するものの中に存在するものとして考えるとき、過去と未来は、宇宙の中でその誕生直後から終末にまで伸びている一つの構造の上で、遠く離れて存在する二つの点と考えることができるといいます。
この構造の上で、我々とは異なる点に座っている人物にとっては、我々にとって未来に属する出来事が、遠い過去のことである可能性もあります。そして、数千年後にならないと我々には見えない出来事からの光は、「いま」すでに我々に向かって時空を横切って移動しているのです。
それは、未来の出来事なのか、それとも過去の出来事なのか、どちらだろう? あるいは、もしかするとその両方なのか? すべては、どの視点から見るかに依存するのです。三次元の世界で考えることに慣れている人には、これは驚くようなことでしょう。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、ドクことブラウン博士が「お前は四次元で考えていないのだ!」といったのは、あなたに向かってだったのです。天文学者にとっては、光速が有限であることは素晴らしく便利なツールになるといいます。
それは、宇宙の遠い過去について、手がかりに過ぎないもの。その痕跡や残骸を探すのではなく、それを直接観測し、時間の経過にともなう変化も見守ることができるということを意味します。
我々は、たった30億歳の、恒星形成のルネサンスのさなかにある宇宙を見つめることができます。そのころ、あちこちの銀河はどれも光であふれているのですが、それが現代にいたる数十億年のあいだに徐々に暗くなる様子も観察できます。
さらに遠い昔を見ることも可能で、銀河と銀河のあいだの暗闇を恒星の光がようやく突き抜けはじめた、5億歳にもなっていない宇宙の中で、あちこちの超巨大ブラックホールの中に物質が渦を巻いて吸い込まれていく様子が観察できます。
まもなく、新しい宇宙望遠鏡を使って、宇宙で最初に生まれた銀河宇宙がたった数億歳だったころに形成された銀河のいくつかを観測できるようになるでしょう。だが、もしもこれらの銀河が最初にできたのだとしたら、それよりもさらに昔を覗き見たら、どうなるのだろうか?まだ銀河など一つも生まれていない時代まで見ることができるのだろうか?
それを目的とする計画がいくつか存在します。現在建設中の電波望遠鏡では、最初の銀河が、光と水素の偶然の相互作用を利用して生まれたときに、源となった物質を見ることができるかもしれません。やがて恒星や銀河になる物質、すなわち水素を直接観測することで、宇宙で最初の構造が形成されるのを見守ることができるでしょう。
だが、それよりもなお遠い過去を見てみると、どうなるのだろう? 恒星や銀河、水素が登場する以前の時代を見てみたら、何が見えるのだろう? ビッグバンそのものが見えるのだろうか?もちろん、見えるでしょう。
「ビッグバン」を見るビッグバンは、一種の爆発のようなものとして描かれることが多いたった一つの点から突然、光と物質が火の玉状に膨張しはじめ、怒濤のように宇宙全体へと広がった、というイメージです。だが、実はそうではないといいます。ビッグバンは宇宙の中で起こった爆発ではなく、宇宙の爆発だというのです。
また、「たった一つの点」で起こったのではなく、すべての点で起こった。現在の宇宙の中に存在するすべての点遠方の銀河の端に存在する一つの点、逆方向の同じくらい遠方の銀河間空間の一部分、そして、あなたが生まれた部屋、これらのすべての点は、その一つひとつが、時間が始まった瞬間には、触れ合うほど接近していたが、まさにこの最初の瞬間に、急速に互いに遠ざかりはじめた。ビッグバンの理屈はいたって単純です。
宇宙はたしかに膨張している銀河と銀河のあいだの距離が徐々に大きくなっているのが観察されるということは、銀河間の距離は過去においては短かったわけです。思考実験として、今日起こっている膨張を巻き戻して、百数十億年の時間を遡ってみると、銀河間の距離がゼロだったはずの瞬間にいたるのです。
現在の我々が観察できるすべてのものを含んだ観察可能な宇宙は、はるかに小さく高密度で、高温の空間に閉じ込められていたはずです。しかし、観察可能な宇宙は、広大な宇宙のうち、我々がいま見ることのできるほんの一部でしかないのです。
宇宙がそれよりもはるかに広がっていることはわかっています。実際、現在の我々の知識に基づいていえば、宇宙の大きさは無限である可能性があり、おそらくそうであるらしいのです。だとすると、宇宙は最初から無限大だったのでしょう。ただ、もっと高密度だったのでしょう。
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